各巻紹介

言語文化とコミュニケーション

言語は人々をつなぎ、文化を生み出す。言語の文化は、人間同士を結ぶコミュニケーションによって培われる。言語文化とコミュニケーションの視座から世界を見渡す時、どのような政策の展望をひらくことができるだろうか。
慶應義塾大学湘南藤沢キャンパス(以下SFC)は、1990年の創設以来、教育・研究の方針として、言語の多様性を強く意識し、その多様なあり方を見据えることこそが、学問と社会の発展に寄与するという信念を実践してきた。この信念は今も揺るがない。だが、言語をめぐる状況は刻々と移り変わる。状況が変われば、新たな課題も生じる。その一方で、時の移ろいにもかかわらず、変わらぬ永遠の課題もある。現在の総合政策学にとって、言語文化・コミュニケーションの課題は何か。その課題を理解することは、政策を考え、実行するための端緒である。また、政策の構想・実施によって世界の現状を改善し、今後の発展を望むならば、人々を結ぶ言語文化・コミュニケーションの課題を広く的確に把握しなければならない。
言語文化・コミュニケーションから政策へ、そして政策から言語文化・コミュニケーションへという相互作用を生み出し、その作用によって状況改善の実践を目指せるのは、分野を横断して学際的な領域に踏み込む総合政策学というアプローチの真骨頂である。このような相互作用を生み出すために、本書では三つの領域に注目する。1)言語そのものと世界・文化の理解との関わり(第1部「ことばを学び、考える」)、2)言語政策・言語教育(第2部「場を創り、ことばを教える」)、3)政治・社会における言語コミュニケーション(第3部「政治を動かし、社会を変える」)、以上の三つである。各領域の課題を俯瞰する時、本書の全体が、言語文化・コミュニケーションの総合政策学にとって、今後の道標として浮かび上がるだろう。

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責任編者

総合政策学をひらく 
30のことば

言語文化とコミュニケーション