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2021.07.29

アイガモ移住計画顛末 ー鴨池にアイガモの新入生が入学しましたー

湘南藤沢事務室 学事(国際・学生支援)担当 
上田千尋(SFC三期生)


45bx5415.jpgSFCといえば鴨池(正式名称はガリバー池ですが誰もそうは呼びません)。そう答える学生・卒業生は多いのですが、その鴨池のカモに、何度も絶滅の危機があったことを知る人は少ないでしょう。
鴨池に定住しているのは、アイガモたちです。これらは野生ではなく、いろいろなご縁でここに住むことになり、大学でエサをやり、飼っているカモたちです。時々、本気なのかネタなのか、事務室に「あのカモを取って食べてもいいですか?」と聞きにくる学生がいますが、SFCの資産...というか、大事に飼っているペットなので食べてはいけません。現在のアイガモたちはおそらく、SFC開設以来、4,5代目だと思われます。
そもそも初代のカモについては、1990年開設したてのキャンパスの貯水池に、何もいない池はさびしいと言って、安斎さんという職員が、野生のマガモをとっつかまえて定住させた、という、嘘か本当かわからない武勇伝が残されています。

コロナ禍でキャンパスが閉鎖されていた2020年の5月、それまでに定住していた6羽のアイガモたちのうち、メスの3羽がすべていなくなってしまい、以降はオスの3羽のみが暮らしています。

44mx2833.jpg鴨たちにエサをあげ、お世話をしてくださっている担当の話では、メスのうちの1羽は12年ほど生きていたので、おそらく老衰で死んだのではないかということ。残り2羽はどこか別のところに行ったのか、ナニモノかに襲われたか...。
2020年の4月~5月の約2か月、コロナ禍によりほぼ無人となったキャンパスでは、ヘビやカラス、ハチなどが多く発生し活発だったとのことで、年老いて弱っていたメスのカモたちが被害にあったのではないかと思われます。
そんなわけで、おじいちゃんカモ3羽だけでは早晩、鴨池のカモは絶滅...という状況でした。

いやいや、鴨池にはもっとカモいるでしょ?...とお思いの方々もおられるでしょう。たしかに、野生のカルガモやアオサギがしばらく居ついたり、冬(12月~3月頃)には北海道や遠くはシベリアからも越冬のマガモがやってきたりで、100羽を超える野鳥が鴨池で見られることもありますが、あくまでも定住しているのは前述のとおりアイガモたちだけなのです。

1V7A0001_re.jpgそこで、SFC卒業生のツテを辿り、南阿蘇で農業を営んでおられるSFC卒業生のご夫婦、大津愛梨さん・耕太さんのところから、アイガモ農法で任務を終えたアイガモたちを譲り受けることになりました。

実は今いるアイガモたちも、同じように大津さんのところから移住してきたカモたちです。以前は、藤沢界隈の農業高校でアイガモ農法をされていたので、そこからいただいたりしていたようですが、現在ではアヒルしかいない...とのことで(アヒル池、はちょっとイヤですよね)、数年前に卒業生のツテを辿って大津さんのところにお願いすることとなり、今回もまたお願いできることになりました。

1V7A0065.jpg前回は、やはり熊本で農業を営んでおられる大津さんの後輩(もちろんSFC卒業生)の方が、遠路はるばる熊本から藤沢まで、自家用車でアイガモたちを運んでくださったとのことでしたが、今回はコロナ禍ということもあり、ペット移送業者にお願いし、陸路+空輸(ちなみにアイガモはアヒルとマガモの交配種で、自力で飛ぶことはできません)でのお引越しです。
1V7A0277.jpg7月20日、朝7時すぎに大津さんから、南阿蘇をカモたちが旅立ったとの連絡と写真、動画をお送りいただきました。暑いのでみんな元気に到着するか心配でしたが、15時すぎに移送業者さんの車でキャンパスに到着。6~7羽ずつがペット用のケージ3個に詰められて運ばれてきましたが、まずは一時的にΩ館に仮囲いに放ちました。
最初は怯えて、なかなかケースから出てきませんでしたが、一旦出てくると、今度は全員で団子になって固まって怯えています。喉が乾いているはずと、水場も用意しましたが、最初は口もつけませんでした。
1V7A0362.jpg数分たつと、数羽が徐々に水を飲み始めましたが、それでもまだカモ団子状態で警戒中。はじめは数人の職員が覗いていましたが、他の業務の都合で見張り番の私一人だけになると、ようやく少し警戒を緩め、徐々に団子が崩れてきます。30分程経つと、一羽、一羽と、エサも食べるようになり、賑やかになってきました。1時間も経つと、それぞれに水を飲んだり、エサを食べたり、水浴びをしたり、毛づくろいをしたり、ガーガー鳴いたり。1時間半が経つ頃には、居眠りを始めるカモたちも。随分とくつろいできました。
16時半すぎに、いよいよΩの仮囲いから鴨池への放鳥です。事務室から手隙の職員が出てきて、皆で様子を見守ります。
1V7A0507.jpg段ボール箱に数羽ずつを入れて(カモたちは体長のわりに随分と軽かったのが印象的です)、鴨池のほとりまで連れて行き、そこで箱から放つと、仲間のカモ同士で集まり、右往左往。なんとか池に着水しますが、元からいた3羽のおじいちゃんアイガモたちが新入りたちの様子を見に来ています。一瞬、威嚇するような素振りもありましたが、すぐにスーッと去っていきました。
数羽が運ぶ途中で箱を脱走し、Ω館を遁走するなどハプニングもありつつ、なんとか20羽全員が鴨池に落ち着きました。
今回移住してきたのは20羽(メス多め)のアイガモたちです。その後も南阿蘇産のアイガモたちは20羽で団体行動をしていますが、早く環境に慣れて、今いる3羽のおじいちゃんアイガモたちと仲良く元気に暮らしてくれることを願うばかりです。

SFCアイガモ移住計画ビデオ

写真・動画協力:吉岡栄司

大津耕太さん・愛梨さんご夫妻からのコメント

大津ご夫妻.png初めまして、夫婦ともにSFC5期生で、熊本県南阿蘇村で農業を営んでいるO2Farmの大津耕太・愛梨と申します。
SFC卒業後、ドイツ留学を経て、2003年に夫・耕太の郷里で後継者として就農。以来19年間、専業農家として日本人の主食であるコメの栽培に励んでいます。
環境情報学部で学んだ私たちが、環境への負荷をかける農業などするはずもなく。「アイガモ農法」と呼ばれる、アイガモに除草を助けてもらうことで、農薬を使わない栽培方法でお米を育てています。
カモと言えば、SFC生として当然思い浮かべるのは鴨池。その鴨池に、我が家で活躍したアイガモたちを送り込めるなんて、卒塾生として何という幸せ。若いうちにしっかり農業の現場で仕事をしたアイガモたちが、引退後ゆっくり過ごさせて頂けるのですから。
うるさい時も臭い時もあるかもしれませんが、キャンパスの一員として迎えて頂ければ幸いです。鴨池が鴨のいる池でありつづけられることを遠くから祈っております。

発信元:湘南藤沢事務室総務担当