ヒューマンセキュリティとコミュニケーション(HC)

  多様化とグローバル化がダイナミックに進む現在の世界の中で、人間の共生の望ましいあり方はいったいどのようなものか。HCプログラムは、この問題に関わるさまざまな課題の解決を領域横断的なアプローチで目指します。

 現代の世界において人間の共生の問題を考えるためには、それぞれの人・集団が持つ個別の特徴を掴むことと併せて、それらが互いに織りなす流動的な対他者関係、すなわちコミュニケーションにも目を配ることが欠かせません。個人とコミュニティ、グローバルとローカルなど、マクロ、メゾ、ミクロをつなぐ視点からの多層的な考察が求められます。そこでは、人が言語を使用し、言語を習得する過程に臨床的に接近しつつ、言語の権力性や植民地性の問題にも鋭敏でなければならないでしょう。本プログラムでは、それぞれの地域の独自の問題系を捉えつつ、世界の各地域に生きている人々が直面している課題に対して、客観的かつ主体的な解決を構想します。さらに、多言語教育をはじめとした教育を通じて社会を変革していく人材に対し、学びと研究の場を提供します。
 
 また、研究対象の実像を捉えるために、数値に基づく客観的な分析が有効であることは言うまでもありませんが、しかしそれに加えて、人々自身の生活世界に近いところで、行為者の経験が持つ主観的な意味をも理解しなければなりません。HCプログラムが扱うのは、端的に言えば、人間の問題です。本プログラムが一貫して人間という問いに着目するのは、客観的な分析対象としての人と主体的な意味を生きる人、また個としての人と集団としての人など、人間というものに固有の幾つかに折り重なった二重性を見逃してはならないという問題意識を共有するからこそです。それに、「人間」という観念そのものが社会や言語や文化によって異なる意味を付与されることにも気を留めなければなりません。
 このような観点に立ちながら、本プログラムでは、構成メンバーの専門領域を踏まえたうえで、以下のテーマを重点的に取り扱います。
 
     文化:口承文学と書き記された文学、言語、思想、芸術、多文化主義、異文化理解
     社会:越境移動、移民、先住民、言語使用
     歴史:近代・現代、植民地
     教育:言語教育、外国語教育、多言語教育
     政治・政策:言語政策、多文化・多民族共生、社会運動
 
 このように、社会や文化、言語が多面的に関わり合う現象をその内部から、また歴史を踏まえて精確に捉えつつ、しかも巨視的な視点から集団間・地域間の関わり合いへと研究の関心を広げていくことができます。グローバル化が進み、越境移動や異文化接触が加速化する中で、人間の共生の今後のあり方を探究するために格好の研究環境をHCプログラムは整えています。
 

関連プロジェクト

  • 現代社会文化論プロジェクト
  • ITと学習環境プロジェクト
  • 言語教育デザインプロジェクト
  • 近代社会研究

(参考)塾生HP:【SFC】履修案内・講義要綱・時間割>政策・メディア研究科>大学院プロジェクト科目 担当者・登録番号表(PDF)

Interview

 ヒューマンセキュリティの遠近法を考える

チェアパーソン 平高史也 教授

学生には、フィールドに出て行くときに何に注目するかを考え、フィールド内で問題を作ることから取り組んでほしいと思っています。たとえば地域の日本語学習支援を例に話すと、国や地方自治体で大きな予算を使って問題を解決していくというスケールで考えてしまいがちです。国の施策ももちろん重要なのですが、そういう国全体や大きな地域という発想だけで問題を見ようとすると、ほんとうに必要な支援とは何なのかという根本的な課題を見落としてしまうことになりかねません。実際に日本語支援が行われている現場に入ってみて、日本語を学んでいる外国人や彼らを支援する人たちが何を必要としているのか、彼らをとりまくネットワークがどう機能しているのか、それを束ねる人には何が求められるのかといった事柄を把握しないと、当事者に寄り添った支援を行うことはできません。普通、人は統計には現れない方法、記録としては残されないような方法で自分たちの生活をとらえています。たとえば、人と人の関係や人と地域の関係などは、記録にはなりにくいけれども、生活を基盤的なところで支えています。こういうところにも注目しながら、人間の生活とそれを支えるコミュニティにおきている問題や、そうした問題を解決していく方法について考えていくのが、HCプログラムの方針です。

メンバーリスト

2018年度10月現在
◎印はチェアパーソン

氏名 職位 専門分野
小熊 英二 教授 歴史社会学
國枝 孝弘 教授 フランス文学、フランス語教育
杉原 由美 准教授 日本語教育、エスノメソドロジー・会話分析、異文化間教育
髙木 丈也 専任講師 朝鮮語学、社会言語学
西川 葉澄 専任講師 フランス文学、フランス語教育
馬場 わかな 専任講師 ドイツ語教育、ドイツ近現代史
氷上 正 教授 中国文学
平高 史也 教授 ドイツ語教育、日本語教育、 社会言語学
藤田 護 専任講師 ラテンアメリカ研究、開発の人類学、アイヌ語口承文学
宮代 康丈 准教授 政治哲学, フランス哲学・思想
藁谷 郁美 教授 ドイツ語、ドイツ文学、ドイツ語教授法

サブメンバー:

氏名 職位 専門分野
神保 謙 教授 国際安全保障論、アジア太平洋の安全保障、東アジア地域主義、日本の安全保障政策
田島 英一 教授 中国地域研究、中国市民社会論、公共宗教論、中国キリスト教系団体研究
野中 葉 専任講師 現代東南アジア研究(特にインドネシア)、現代社会と宗教、女性とイスラーム、マレー・インドネシア語教育
廣瀬 陽子 教授 国際政治、紛争・平和研究、旧ソ連地域研究(特にコーカサス)
渡邊 頼純 教授 国際政治経済論、GATT・WTO法、欧州統合論

教員検索(教員プロフィール)

キャリア・資格等

就職先としては、国際機関、開発コンサルティング、地方自治体、民間シンクタンク、一般企業、ジャーナリズム、活字・視聴覚メディア、教育界などの業種が挙げられます。また、開発社会学、国際経済学、国際組織論、地域研究論、ヒューマンセキュリティ論、外国語教育、言語文化、コミュニケーションなどの研究者を育成します。

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