エクス・デザイン (XD)

 21世紀に入り、科学技術の高度化と文化的基盤の成熟化がめまぐるしい速度で進んでいます。また社会全体に広くコンピュータが普及したことで、ものづくりやシステム開発の進め方だけでなく、人々の思考や価値観、知覚や認識の方法も大きく変容し、20世紀型の古い尺度や方法論が通用しなくなるような場面が急速に増えつつあります。こうした疾走する時代感覚と多様化する生活環境・社会状況において、未来への想いを具体化/具現化することのできる「デザイン」の素養を持った人材が広く求められています。XDプログラムは、「クリエイティヴマインド」を研究の基本的な推進力・原動力として持続しながら、産業と文化、企画と設計、開発力と表現力、分析力と創造力、技法と技術、科学的理性と芸術的感性、論理と倫理、作り手と使い手、伝統技術と先端技術、のように従来は分断されていた要素や矛盾・対立を再び包摂・統合し、プロトタイプから具体的な社会実装までを担う新たな領域のデザインのエキスパートを育成します。

XDのデザインマインドは5つのXから構成されています。

  1. 伝統的な「◯◯デザイン」ではなく、まだ確固たる名称のない、未知なるデザイン領域(=X)の「開拓」に積極的にチャレンジすること。
  2. 極端な(eXtreme)状況における人工物のデザインやデザインの方法論を対象とすること。
  3. 技術シーズに基づく実験的な(eXperimental)プロトタイプを奨励し、具体的な社会実験(eXperiment)から評価やフィードバックを得て、常に時代に先駆けた活動を行うこと。
  4. 単に分野融合的(Crossing)に終わるだけでなく、分野どうしの価値や思想の相乗効果=掛け算(X)を狙うこと。
  5. システム開発やモノづくりの修練を通じて、真の自己実現や自己表現(eXpression)の喜びを経験・共有すること。

XDプログラムでは、以下のような具体的な研究領域を想定しています。

  1. 人々の創造性を刺激・支援し、新しいものづくりを社会的に広げるためのプロトタイピングツールキット、デジタルファブリケーション、ハイブリッドクラフト、クリエイティブコーディング
  2. 人々の行動や環境の観察に基づく「場」の理解、異文化理解や国際連携のための「場」の創出としてのコミュニケーションデザインおよびソーシャルデザイン
  3. 小型センサやハイパフォーマンスコンピューティングを活用したグラフィックス、インタラクティブシステム、コンピューテーショナルデザイン
  4. 微生物や虫などのミクロなスケールから、地球や宇宙等などのマクロなスケールまでを横断するデザイン・エンジニアリングと情報デザイン
  5. 未来社会への提案としてのシナリオメイキングとスペキュラティブデザイン、ひいては確固たる方法がない未知の分野における新たなデザインの思想・理論・方法・プロセスの提案とその実践

普遍的なデザインプロセスにXDの5つのマインドを織り交ぜたプロトタイピングを通して、これら領域における制作と研究を進め、新たなディシプリンを紡ぎ上げていくことが期待されます。外部とのコラボレーションや企業との共同研究も多数行われており、リアリティを獲得しながら実践的なスキルを獲得することができます。他方、アカデミックな実験作品や個人による自由な研究も奨励しており、全く新しい萌芽がSFCから生まれることも望まれます。

エクス・デザインプログラム ウェブサイト
http://xd.sfc.keio.ac.jp/

関連プロジェクト

  • Designing Real
  • ソーシャル・ファブリケーション
  • モバイル・メソッド
  • 生活実践知
  • プレイス&モバイルメディア

(参考)塾生HP:【SFC】履修案内・講義要綱・時間割>政策・メディア研究科>大学院プロジェクト科目 担当者・登録番号表(PDF)

Interview

 多様なデザインとアートが習合する実験工房へようこそ

チェアパーソン 中西 泰人 教授

SFCは設立当初から問題発見と問題解決の力を重視してきました。問題発見はアートが担う領域であり、問題解決はデザインの目的そのものです。これらは独立して扱うべき対象ではなく、両輪として機能すべきものであることは言うまでもありません。XDはアートとデザインに関わる多様な領域を研究対象として扱う大学院プログラムです。工学系、人文系、社会系、美術系といった区別はここには存在しません。多様なバックグラウンドを有する表現者、研究者、実践者が集合し、共に創造し、議論し合う実験的な場です。
XDでは多様性を最も重視しています。音楽、映像、グラフィクス、ロボティクス、メディアアート、ファッション、プロダクト、批評、コミュニケーション、デジタルファブリケーション、等々、扱うフィールドは多岐に渡ります。学生は教員が主催するそれぞれのスタジオに所属しながらも、プロジェクトに応じて離合集散し、XDの全教員と全学生が参加するレビューで発表とディスカッションを繰り返し、創る喜び、方法論、ビジョンといった思考のエッセンスを共有するオープン・クリエイションを通して自身の研究を作り上げて行きます。多様性に満ちた「創造の生態系」に身を置くことがXDで学ぶ醍醐味です。
XDではオルタナティブかつインディペンデントな精神を大切にしています。それは、権威化したデザインやアートに迎合することなく、真に新しいものを創造・追求する精神と言っても良いでしょう。先端技術への貪欲さ、フィールドワーク主義、プロトタイピングを通した思考の重視といったXDの特徴は、真に新しいもの創造しようとする心から生まれたものです。これらは福澤諭吉が大切にした独立自尊、自我作古の精神に他なりません。私は慶應義塾大学のXDプログラムこそがこれからのデザインとアートを学ぶ上で最も刺激的な場所であると信じています。

メンバーリスト

2016年度4月現在
◎印はチェアパーソン

氏名 職位 専門分野
石川 初 教授 ランドスケープアーキテクチュア(景観・緑地・造園の計画、設計)、地理、地理教育(地形、地図などの研究と表現)
オオニシ タクヤ
准教授 軽量・極限建築、エネルギー・デザイン
筧 康明 准教授 インタラクティブメディア、拡張現実感、 メディアアート、ヒューマンインタフェース
加藤 文俊 教授 コミュニケーションデザイン、ファシリテーション論、定性的調査法
田中 浩也 教授 デザインツール、デザインマシン、パーソナル・ファブリケーション、ソーシャル・ファブリーション
中西 泰人 教授 情報デザイン、経験デザイン、ヒューマンインタフェース、モバイルコンピューティング、アーバンコンピューティング、設計支援、創造活動支援
鳴川 肇 准教授 美術、デザイン、建築、遠近法、世界地図図法、データの視覚化
水野 大二郎 准教授 ファッションデザインの実践と批評、社会的包摂を目指すデザインのための実践、領域横断型デザインにおけるデザインリサーチ
脇田 玲 教授 形状モデリング、Computer Aided Design、スマートマテリアル

サブメンバー:

氏名 職位 専門分野
小川 克彦 教授 コミュニケーションサービス、ネット社会論、ヒューマンインターフェース
諏訪 正樹 教授 認知科学、コミュニケーションデザイン、デザインサイエンス、人工知能
増井 俊之 教授 ユーザインターフェース、ユビキタスコンピューティング
松川 昌平 准教授 建築設計、アルゴリズミック・デザイン、設計プロセス論

教員検索(教員プロフィール)

キャリア・資格等

本プログラムでは、先端技術を基盤としながら自らの五感と手を使って新しい価値を創造する人材を育成する。たとえば、クリエイター、デザイナー、アーティスト、エンジニア、さらには、デザインリサーチャー、デザインエンジニア、デザインディレクター、アートディレクター、メディアアーティスト、メディアアーキテクト等と呼ばれうる職能ですが、究極に目指しているのは「まだ名称のない新たな職能」を自ら構築する人材です。これまでの修了生の進路は、国内外の通信キャリア、電気機器メーカー、通信機器メーカー、ゲーム、CG、放送、映画、広告、WEB、携帯コンテンツ、出版、商社、コンサルティングなど多岐にわたっています。それぞれの業種の中で自分の仕事や未来の仕事をつくることを強く推奨しており、ベンチャー企業を起業する例や海外へ留学する例も少なくありません。

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