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フィールドロボティクスへの憧れからドローンの実装的研究へ

フィールドロボティクスへの憧れからドローンの実装的研究へ

木村 元弥 Kimura Motoya
学部:環境情報学部2年
出身校:池田学園池田高等学校(鹿児島県)

ロボットづくりの原点

私は幼い頃からものづくりが大好きで、祖父の家にあった大工道具で色々なものを作って楽しんでいました。鹿児島に住んでいたので、JAXA(宇宙航空研究開発機構)が身近だったこともあり、はやぶさ等の探査機などフィールドロボティクス分野に興味と憧れを持っていました。小学校の時に、マルチコプターと呼ばれていた初期のドローンにカメラを搭載して軍艦島を撮影した映像を見て衝撃を受けました。初めてドローンの存在を知ったのがこの時です。
中学生になってから、お年玉で買ったり誕生日にもらったりして集めた部品で自作ドローンに挑戦。飛ばすことはできましたが、モーターの推力不足でカメラは積めず、悔しい思いをしました。これが私のロボットづくりの原点です。
高校ではマイクロプラスチックの海洋汚染問題に取り組み、海底からサンプルを採取するためにドローンのソフトウェア「Ardu Pilot(アルジュパイロット)」を使って水中ドローンを作りました。このプロジェクトはJSEC(Japan Science & Engineering Challenge)で審査員奨励賞を受賞しました。また在学中には、千葉工業大学未来ロボット技術研究センター所長の古田貴之先生にお会いする機会があり、福島第一原発内部の探査に使われた「Quince」等のお話を聞いて、とても感銘を受けました。この経験は、私のフィールドロボティクスへの情熱をさらに高めました。

本格的にドローンの開発に携わる

大学ではドローンやフィールドロボットに関わる研究がしたいと思っていましたが、ドローン研究を行っている大学は多くはありませんでした。その中でも、SFCのドローン研究は実用に一歩近い段階にフォーカスしているように見受けられ、社会的実装に向けた取り組みに大きな魅力を感じました。早くから研究会に所属できることや、学際的な環境も、SFCに決めた理由です。
入学当初は、まずは単位を落とすまいと思い、必修科目を優先して履修していました。ところが、SFCでは学生が自由に研究やプロジェクトに取り組めるようにカリキュラムが工夫されていたので、時間的な余裕がありました。そこで、友人2人とJIC(Japan Innovation Challenge)というレスキュー用ドローンのコンテストに参加することにしたのです。自分たちでドローンを設計し、製作しようと計画したものの、資金や技術の問題で行き詰まってしまいました。すでにエントリーを済ませていたこともあり、職員の方から紹介された武田圭史先生に助けを求めました。無謀なエントリー後の相談にもかかわらず、武田先生は親切にアドバイスしてくださり、「今年はちょっと難しいと思うから、うちの研究会に来て、来年挑戦してみては?」と言ってくださったのです。
こうして私は、武田圭史研究会のメンバーとして、JIC2023に向けて「無人航空機(ドローン)を用いた山岳遭難者の救難救助支援技術の研究開発」をテーマに研究に取り組むことになりました。災害現場では通信環境の不良が想定されるので、現場から離れた場所からコマンドを出して、機体自体が半自律して動くようにする必要があります。ですので、研究では、災害現場に物資を届けるための25キログラム級の大型ドローン実機と、それをネットワーク回線経由で制御するためのクラウドベースの「無人機管制システム」の開発をしています。

飛行実験に最適な環境が揃っているSFC

SFCには、ドローンの飛行実験に最適な環境が整っています。ドローンを飛ばすための申請を行えば、建物や道路、土地や森林、貯水池など、キャンパス内のフィールドを使って、様々な想定で実験することができます。
たとえば、市街地での運用を想定すると、キャンパスには建物があり、人もいます。また、緑豊かなキャンパスなので、森林などの上空を飛ぶ想定も可能です。水面や芝生もありますので、ロボット・ドローンやそれに使うセンサー等の性能や精度を検証しやすい環境といえます。このような恵まれた条件を兼ね備えた環境は、他にはなかなか見つからないと思いますし、航空法の制約などもあって実現は難しいでしょう。プロペラの効率を高めるといったような、部分的な技術を深く研究する従来型の工学の姿をした研究室は他の大学にも多く存在しますが、ドローン実機の製作、システム全体の開発、そして飛行実験まで行うことができる研究室は、日本では数少ないのではないでしょうか。
どれだけ実験できるかが開発のスピードや成果に大きく影響するので、校内ですぐに飛行実験ができることは、とてつもなく貴重です。このようなSFCの環境は、非常に大きなメリットだと思います。

JIC2023の結果を受けて

2年生の5月頃から実機の製作を始め、ついにJIC2023への参加が叶いました。JIC2023の2つある課題のうち、山岳遭難者を想定した体温のあるマネキンを探す課題1は、完成系の機体を使って成功させることができました。課題2は、遭難者がいる場所に3㎏の救援物資を運ぶというものでしたが、開発中の実験機がうまく作動せず、残念ながら失敗に終わりました。課題の残る大会となりましたが、次こそは課題を達成し、結果を残すために、引き続き、研究テーマに関する開発、実験に取り組んでいきます。そして将来は、JAXAやJAMSTEC(海洋研究開発機構)などの研究機関で、フィールドロボットの研究開発に関わり続けたいと思います。