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2026.01.20

研究倫理:政府指針の再確認のすすめ|健康マネジメント研究科委員長 前田 正一

近年においても、非倫理的な研究や、科学的妥当性に問題のある研究が報道されることがある。こうした事態を防ぐため、わが国では、研究倫理に関する法令や各種の政府指針が策定されてきた。

現在、政府の委員会において「人を対象とする生命科学・医学系研究に関する倫理指針」の見直しが検討されている。これに伴い、昨年末から今月25日までの期間、意見募集(いわゆるパブリック・コメント)が実施されている。

本指針は、研究倫理に関する代表的な政府指針であり、SFCで行われる研究にも、直接的または間接的に関係する。すなわち、本指針の適用を受ける研究を実施する場合、研究者は指針に基づいて研究計画を策定する。また研究倫理審査委員会は、申請のあった研究について、それが本指針の適用を受けるものであれば、本指針の内容に基づいて審査を行う。
もっとも、研究の内容によっては、適用される政府指針等が存在しない場合もある。このような場合であっても、例えば論文投稿先からの要請への対応として、研究者が研究倫理申請を行い、研究倫理審査委員会が研究計画の審査を行うことがある。その際、研究者は、本指針をはじめとする代表的な指針の趣旨を踏まえて研究計画を作成することがあろう。また、研究倫理審査委員会は、同じく代表的な指針の趣旨を踏まえて審査を行うことがあろう。
以上から、本指針は、研究者(とりわけ、生命科学研究や医学系研究に携わる者)にとっても、倫理審査委員会の委員や事務担当者にとっても、事前に十分に把握・理解しておくべき重要な指針であるといえる。

しかし、本指針は、個人情報保護法の改正への対応などのために、これまでに複数回の見直しが重ねられた結果、現在では、指針の内容が複雑かつ難解なものとなっている。このため、研究者のみならず、倫理審査委員会の委員にとっても、正確な理解のために相当の時間と努力を要する状況となっている。こうした事情もあり、倫理審査委員会の審査に質のばらつきがあることが指摘されるなど、看過できない課題も生じている。

指針の理解の難しさについては、読者の多くの方も実感された経験があるのではないだろうか。私自身も、研究倫理審査や政府指針の策定・見直しに関わる中で、指針の解釈や理解に苦慮する場面が少なくない。

現在行われている意見募集は、こうした課題への対応を念頭に置いた、指針見直しに向けた重要な手続きである。ちなみに、いわゆるパブリック・コメントの制度は行政手続法に基づくものであり、例えば同法第39条第1項は、「命令等制定機関は、命令等を定めようとする場合には、当該命令等の案(略)及びこれに関連する資料をあらかじめ公示し、意見(略)の提出先及び意見の提出のための期間(略)を定めて、広く一般の意見を求めなければならない」と規定している。

ぜひこの機会に、研究に携わる立場として、本指針を改めて確認してみてはいかがだろうか。そして、意見や気づきがあれば、パブリック・コメントとして提出することも、研究者として重要な活動の一つであるといえるであろう。

前田 正一 健康マネジメント研究科委員長/教授 教員プロフィール