看護医療学部は、保健・医療・福祉の分野において先導的役割を果たすための「看護学」を創出する、という理念のもと、2001年4月SFCに開設されました。総合大学の中での「知の融合・発展」を目指し、SFC= SHARE(情報の公平な共有:環境情報)×FAIR(公共政策の公正さ:総合政策)×CARE(ケアリング:看護医療)という学問の融合によるこれまでにない新たな展開を期待してのスタートでした(看護医療への招待、慶應義塾大学出版会,2000より)。看護医療学部生は、総環の開講科目を履修したり、研究会やサークルに参加したりして、看護分野はもとより多分野の知識を学び、多様な価値観を共有してきました。こうした体験は、探究心、好奇心、創造力、柔軟性、共生力を培い、信濃町における専門学習を下支えし、その後の専門家としての発展、人としての成熟、多様なキャリア選択や開拓を大きく後押ししています。
そして来年、看護医療学部は開設25周年となります(写真1)。卒業生は2千人を超え、看護諸分野のエキスパート・スペシャリストとして、起業家・イノベーターとして、教育・研究者として、グローバルヘルスを推進するリーダーとして等々、国内外で活躍し人々の命と健康を支えています。その活躍は、ほんの一部ですが看護医療学部webページでも紹介されています。卒業生を送り出すようになって20年、今は子育てに専念しているという人もいますが、これももちろん大事な営みであり、看護の力は家庭の中でも間違いなく発揮されているでしょう。ひと段落してキャリアを再開する人たちがこれから増えてくるのではないでしょうか。楽しみです。
教員は学部開設後から、SFC「e-ケアタウンプロジェクト」に参加したり、SFC研究所に看護ベストプラクティスラボを設置し活動するなど、研究と社会実装に取り組んできました。もう一つの足場である信濃町キャンパスを含め、他学部や大学病院看護部との研究連携が進み、医療系3学部における合同教育は各学部の教育科目としてすっかり根付いています。このように、本学部は「看護学」を軸に、他の学部・研究科・部門、さらに国内外の研究者と協働しながら、目標とした知の融合・発展の具現化に取り組んできました。
これからの日本は超高齢化が急速に進み、医療人材・資源・費用の持続可能性の課題等に取り組んでいかねばなりません。ゲノム医療の進展やAIの技術革新が進み、保健医療のあり方はさらに大きく変容していくでしょう。パラダイムシフトが進む現代そして未来において、人々の健康と幸福を希求し実現する「看護」の重要性は普遍です。人間を対象とする以上、人に関心を傾け観察し共感をもってケアする目と手(看)、人の尊厳と健康・命を守る実践(護)=「看護」の本質と価値は変わりません。本学部は、変わらぬ看護の本質と価値を軸に、様々な課題を乗り越えながら、創造的に挑戦的に看護を追求する人材の育成、知の統合・発展に貢献していくことと思います。
先日、8月30日(土)、学部の教職員と卒業生代表はワークショップを開催しました(写真2)。看護医療学部開設25周年記念事業の一環で、学部の未来についてディスカッションしました。会場は、未来創造塾β-1・多目的スペース。テーマにぴったりの会場で熱く議論し、その後はピザパーティで盛り上がりました。ワークショップの成果は来年6月14日の25周年記念式典で紹介されます。乞うご期待、です。
この9月末で学部長の任期を終えます。おかしら日記もこれで最後です。これまで支えてきてくださった全ての皆様に心から感謝申し上げます。

(写真1)看護医療学部開設25周年記念ロゴマーク