和小物店で九谷焼の眠り猫に出会った。端正で柔らかな寝顔、白素地に美しい菊と唐草模様。一目惚れし購入した。店員さんが言うには、招き猫は積極的に福を招くが、眠り猫は福をゆっくり寝て待つ。ゆっくりいきましょうというメッセージが込められているので忙しく過ごしている人にぴったりの縁起物だとのこと。家に連れて帰り、教えてもらった縁起のいい日にリビングに飾った。縁起物を買うことはこれまであまりなかったなと思ったが、考えてみれば自分で買わないにしてもたくさんの縁起物に囲まれて生活している。お正月には毎年お守りをいただき、鏡餅を飾る。実家には北海道土産の木彫り熊や吠える虎が飾ってあった。おかめひょっとこのお面、受験につきものの達磨、干支の飾り物、お財布の根付けなどなど。長男が小学生の頃に粘土で作ったシーサーも研究室の机の上で笑っている。
世界中どこの国にも、その土地の文化や宗教、歴史に根付いた様々な縁起物がある。起こるかもしれない困難が小さいものであるように、なんとか乗り切っていけるように、そして幸せに安寧に暮らせるように、人々は願う。その願いをやんわり受け止め応援してくれるのが縁起物なのだろう。縁起物の「助けてくれているような気がする」くらいの"何となく"感がいい。やんわりと励まし、やんわりといさめてくれるから、心が少し落ち着き、ちょっと前向きになれる。私たちは、周囲の人たちに支えられて生きているが、それだけではない実にいろんなものに支えられているのだ。
眠り猫に話を戻す。眠り猫といえば、日光東照宮の「眠り猫」の彫刻が有名である。穏やかに眠っている姿が平和と共存を象徴しているとのことだが、そういえばうちの眠り猫を見つめていると「お疲れ様、のんびりいきましょう」と語りかけられているように思える。きっと自分に足りていないもの、求めているものが投影され、眠り猫がそう言っているように思えるのだろう。
気づけばいつの間にかうちの猫が増えている。要するに買い足しているのである。愛らしさも増している。ありがとう。おかげでゆったりと落ち着いた気持ちになれています。自分の心の声に耳を傾けたい方、好きな縁起物を置いて語りかけてみてはいかがだろうか。