6月初めの春学期前半と後半が切り替わるタイミングで、生物調査を行うために志津川山林へ学生2名と出張してきた。志津川山林については、2024年5月に公開されたおかしら日記で紹介したが、今回は繁殖期の鳥類調査、春の昆虫類調査、そして林内に設置しているカメラトラップのデータ回収が目的であった。今回は鳥類について少し紹介したい。
日本では春に鳥類は繁殖の時期を迎える。SFCでもツバメやスズメが子育てをしている様子を目にすることがあるだろう。ある地域の鳥類の分布を把握するためには、繁殖期の調査が欠かせない。繁殖期に日本を訪れる鳥類を夏鳥と呼ぶ。一方で、冬だけ日本に滞在する鳥もいてそれらは冬鳥と呼ばれる。一年中日本で過ごす鳥は留鳥という。春の志津川山林は留鳥に加え、多くの夏鳥が訪れ、実ににぎやかになる。
繁殖期の鳥たちは早起きである。日が昇る前から活動をし始め、あちこちでさえずり、子育てのためにせっせと巣作りをしたり、餌を運ぶ。通常繁殖期の調査は、鳥たちの活動が活発な日の出から2時間から3時間の間に行う。この時期の南三陸町の日の出は4時過ぎぐらいなので、調査者は早起きを強いられる。
夏鳥として志津川山林を訪れる鳥類としては、オオルリ、クロツグミ、キビタキ、センダイムシクイ、ヤブサメ、ツツドリ、ホトトギスなどが挙げられる。オオルリ、クロツグミはSFCではめったにお目にかかることができないので、その美しいさえずりが実に心地よい。留鳥としては、ヤマドリ、コゲラ、アカゲラ、アオゲラ、ヤマガラ、ヒガラ、シジュウカラ、エナガ、メジロ、ウグイスなどが見られる。
今回の調査では、サンコウチョウと新たにアカショウビンを確認することができた。サンコウチョウは長い尾が美しい夏鳥で首都圏ではごく限られた場所でしか繁殖していない。どこどこで繁殖しているらしいという噂が広まると、人が集まりすぎて繁殖に悪い影響を及ぼす可能性が指摘されるほどの人気である。アカショウビンはカワセミの仲間でその名の通り美しい赤い色である。こちらも同様に人気者である。
実はアカショウビンは2年前にも記録をしていた。山小屋の近くで声を聞き、ずいぶん周囲を探し回った。その後も声を聞いたので、姿は見えないが生息しているだろうと思い込んでいた。ところが、山小屋の中に時計があり、その時計が毎時ちょうどに様々な鳥の鳴き声を鳴らすことが分かり、その一つにアカショウビンが入っていた。何とも恥ずかしい話で、その後アカショウビンを確認リストから外したが、今回は山小屋からかなり離れた場所で学生が鳴き声を録音してくれた。次はしっかり姿を見たいものである。