総合政策学部 専任講師 佐藤 豪竜
専門分野:医療経済学、社会疫学
社会経済状況などの人を取り巻く環境が健康に与える影響を、統計的な手法を用いて明らかにすることを専門としています。
かなりハードな研究会
- 研究会の活動 -
私の研究会は、応用ミクロ計量経済学の手法と統計ソフトのRを用いて、現代社会の諸問題を定量的に分析する技術と知識を身に付けることを目的としています。以前からある中室牧子先生の研究会と合同で運営しているのですが、中身はかなりハードです。
毎回の研究会は、個人研究の報告が中心で、各学期に一人一つずつ研究を完結させることが求められます。発表は、研究の問題意識、先行研究のレビュー、研究に用いるデータの記述統計、推計、考察の4~5つのセクションにわかれ、2週間に一度発表の番が回ってきます。私自身は医療や健康を専門にしているのですが、ゼミ生の発表テーマは経済、文化、教育、政策など「自由」で、論文として世に出せるような実証研究を目指して取り組んでいただきます。
一人の発表に対して、ゼミ生に加え、中室先生や特任の先生、私が質問やコメントをします。発表はプロフェッショナルとして振る舞うことが求められ、「知りません」「分かりません」「考えていませんでした」「すみませんでした」などと言うことは禁止されています。少しでも手を抜いた発表をすると、容赦なく学術的な批判に晒されます。発表を無断欠席しようものなら、例外なくキックアウトです。学生とはいえ、発表では対等な立場として、教員も本気で発言をします。発表前日は発表準備のため、寝不足の人が多いです。

覚悟のある人のみ参加を
- 研究会の特色・学生へのメッセージ -
上記のとおり、相当負荷の高い研究会であるため、ゼミ生はこの研究会にかなりの時間と労力を費やす覚悟が必要です。一学期(3か月半)につき一つの研究を行うというのは、本職の研究者であっても大変なものです。以前、私からゼミ生に「もう少しペースを落として、一つのテーマを一年くらいかけてじっくり研究してはどうか。」と提案したことがありました。しかし、ゼミ生の方から「一学期で研究を完結させるペースは落としたくない。」と断られてしまいました(笑)。教員というよりは、研究に貪欲なゼミ生が主体となって研究会を運営しています。
研究の成果は、大阪大学の大竹文雄先生、東京大学の澤田康幸先生の研究会と合同で実施しているインゼミで発表します。ゼミ生の発表の中から、大竹先生と澤田先生が最優秀賞を決められ、豪華賞品が与えられます。一学期をかけて本気で取り組んだ研究を一流の経済学者から評価されるので、最優秀賞を得た学生は、インゼミ後の懇親会で文字通りの美酒(未成年はソフトドリンク)を味わうことができますが、他の学生は相当悔しい思いをすることになります。しかし、その悔しさや反省を活かして、次の学期に目覚ましい成長を遂げたゼミ生の発表を聞くのが、私の楽しみです。
ゼミ生の多くは民間企業に就職します。しかし、ここまで学術的にシビアな態度で研究会に臨むのは、研究に一生懸命打ち込んだ経験が、社会でも役立つと信じているからです。論理立てて分かりやすく説明する力、データから真実を見抜く力、そしてタイトなスケジュールの中でやるべきことをやり抜く力 ―最初は突っ込みだらけの発表をしていた1~2年生も、4年生になる頃には隙のない老練な発表をするようになります。この研究会をやり遂げた学生は、きっとどんな場所に行っても大丈夫だろうと、自信をもって社会に送り出しています。


総合政策学部 専任講師 佐藤 豪竜 教員プロフィール