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2022.06.07

次のステージに向けて|SFC研究所長 飯盛 義徳

SFCを取り巻く環境が大きく変わろうとしていることはご存知だろうか。2013年に首都圏中央連絡自動車道(圏央道)に寒川北インターチェンジが供用開始。2021年3月には、東名高速道路に綾瀬スマートインターチェンジが開通した。これで都心からのアクセスは各段によくなった。また、キャンパスから湘南台駅までの道路(遠藤高倉線)は拡幅される計画であり、渋滞も緩和する見込みだ。

未来創造塾もSFCの開展を示すシンボリックな存在である。2020年度、「未来のキャンパスは自分たちで創る」をコンセプトに掲げた滞在型教育研究拠点「βヴィレッジ」全7棟が竣工し、現在はΗ(イータ)ヴィレッジ学生寮の建設が順調にすすんでいる。また、2021年3月には、未来創造塾の敷地のすぐ側に湘南藤沢国際学生寮もオープンした。これから、SFC周辺地区の滞在交流人口は確実に増えていく。

さらに、SFC周辺の「健康と文化の森」地区は、2023年度末ごろを目処に市街化区域に編入される計画であり、現在、まちづくりに関わるさまざまな施策が検討されている。エリアはSFCから菖蒲沢境の交差点辺りまでの道路沿いに位置しており、約36ヘクタールの広さである(ちなみに、未来創造塾も含めたSFCの敷地面積は約34.4ヘクタール)。その中に、約3000人の居住者が想定されている。この健康と文化の森地区の開発は、藤沢市「令和4年度施政方針」の中でも、「重点的な取組」の一つとして位置づけられている。まちづくりのコンセプトは、「FUJISAWA LIFE INNOVATION BASE〜藤沢市の新たな拠点として無限の可能性を創出し未来へ向けた新しいまちづくりの実現を目指します〜」。今まで、地区全体の方向性が提示され、一緒に事業を推進する企業グループである事業化検討パートナーが選定された。

現在は全体のゾーニングが議論されているところである。まず、遠藤山崎の交差点(藤沢慶応前郵便局付近の辻堂につながるT字路)辺りに相鉄いずみ野線延伸による新駅が設置される計画だ。駅の周辺には駅前広場や商業・住居系ゾーンが設定されている。看護医療学部からバスのロータリー辺りまでは住居系ゾーン、商業系ゾーン、コミュニティ施設ゾーンが並ぶ予定である。また、遠藤山崎の交差点から菖蒲沢境の交差点辺りまでの道路の南側一帯が産業系ゾーンとして検討されている。

いさがい.pngキャンパスに向かう途中、菖蒲沢境の交差点を越えた辺りから緑の豊かさに目を奪われる。一口に緑といっても花萌葱や深碧などさまざまな色があり、春夏秋冬で違った顔を見せてくれる。その緑の向こう側に雪に煙る富士山が見えると、清々しい気分になる。この地区や藤沢市の方々からは、このような美しく、豊かな自然環境をいかしながら、SFCの多様で先端的な研究成果を調和させた、どこにもない新しいキャンパスタウンづくりが期待されている。


どのまちづくりの活動も最初の一歩はごく小さいもの。まずは健康と文化の森地区での何らかの実践をもっと増やして、大学との関係性を広げていくことが大切だろう。現在、そのための手立てを講じているところである。そして、健康と文化の森地区、SFC内外の多様な人々が相集い、相互交流が活発になり、予期もしないような新しい活動や価値、SFCらしい面白いことが次々と生まれるような仕組みをつくりあげることが肝要だ。

SFCは1990年の開設以来、さまざまなイノベーションを果たしながら、社会の変革を嚮導してきた。今回の健康と文化の森地区の開発は、SFCにとっても新しい次のステージにすすむための千載一遇の好機だ。地域にとってもSFCにとってもメリットのある、多様な主体が学び合う、ユニークな共創のまち(キャンパス)づくりが求められている。そのためには、キャンパス創設のころのように、自我作古の心意気で議論、実践を重ねていかなければならないだろう。まちづくりの具体的な内容についてはまさにこれから吟味がスタートする。皆様のご理解、ご協力を切にお願いしたい。

飯盛 義徳 SFC研究所長 / 総合政策学部教授 教員プロフィール