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2019.05.17

未来を創る、イノベーターになろう |千葉 功太郎さん(1997年環境卒業)

千葉 功太郎 さん

慶應義塾大学SFC特別招聘教授/ 個人投資家 / Drone Fund代表パートナー
国内外インターネットやリアルテック業界のエンジェル投資家
リアルテックファンドクリエイティブマネージャー

1997年 環境情報学部 卒業

SFCスピリッツの創造

ドローン千葉さんトリミング後.png

「SFCらしさ」というのは、常に新しいことにチャレンジする志ではないでしょうか。その時代その時代のあらゆる最先端に興味を持つ。面白いことを見つけたら実際にやってみる。SFCに来たからには、未来にアンテナを張り続けることが大切だと思うのです。そういう志に応えるためにも、未来感のあるわかりやすいキーワードが必要。私が力を入れているドローンはその一つですし、ロボティクス、AI、ブロックチェーンなどもそうでしょう。そういうキーワードに基づいた未来へ、誰よりもどこよりも先にチャレンジする、それがこれからのSFCを創造していくのではないかと思っ
ています。
2019年度、特別招聘教授として教壇に立ちます。「SFCスピリッツの創造」という授業を何名かで受け持ち、SFC開設30周年へ向けて、あらためて"SFCらしさとは何だろう"というテーマを提起していきます。私はSFCの4期生ですが、その年代の卒業生はみんな、初代総合政策学部長の加藤寛先生の最初の授業で、「君たちは未来からの留学生」と言われて衝撃を受けました。そのような衝撃を今一度、学生に与えていきたいと考えています。

ドローン前提社会がやって来る

201810_SKYDRIVE_SD-XX_ロゴあり.jpgドローンは、まったく新しいインフラです。ブルーオーシャンと呼ばれる、今までなかったところに創出される未開拓の市場。なぜかというと、航空法という法律で、航空機の最低安全高度は150m以上と定められている。一周4万kmの地球上の0mから150mまでは空いているわけです。その誰も使っていない空間をインフラ化する。物理的なインターネットのようなイメージです。そして、発展と普及がインターネットよりずっと短い時間で実現される。10年ぐらい経てば、ドローンが日常生活に欠かせないものになる「ドローン前提社会」の時代がやって来ると思っています。そのように思ったのは、ドローンをユーザーとして使ってみた実感でもあります。私は新しいことを始めるときには、必ず自分でやってみるようにしています。ドローンも3年くらい時間をかけて実際に飛ばしてみて、自分の感覚として"これは間違いなく新しいインフラになる"という確信を持ったので、ファンドというビジネスの形でスタートアップの支援を始めました。
現在「Drone Fund」は、国内外で29社に投資しています。例えば、人が乗車できる、空飛ぶクルマを開発している企業。都市の地下空間を飛んで、亀裂やパイプのずれをAIで自動検知する手のひらサイズのドローンを作っている企業。大・中・小さまざまなプロジェクトが動いています。

社会許容度を高めるために

もちろん課題はあります。というか、新しいことを始めるわけですから、課題ばかりと言ってもいいでしょう。テクノロジー面にもあるし、法律面にもあります。もう一つ、社会許容度を高めることも忘れてはいけません。「ドローン=怖い」と思われているとしたら、「ドローン=楽しそう、便利そう、使ってみたい」という印象に変えていく必要があります。
例えば、女性に受け入れてもらえるドローンのコンテンツを考えるとします。駅から一人で家まで帰るとき、電車が着いたタイミングでドローンを呼び出すと、帰宅するまでAIで見張ってくれる「見守りドローン」はどうだろう。夏の炎天下、荷物で両手がふさがっているときに、日傘をさして付いてきてくれる「日傘ドローン」はどうだろう。そういう使い方が実現できれば、女性にとってドローンは身近でかわいい存在、便利な存在になっていくのではないだろうか、といったことをイメージします。一般社会全体に受け入れてもらうことは、とても重要な課題です。受け身ではなく、自分が未来を創る側に立って、乗り越えていきたいと考えています。

SFCにドローン拠点としての可能性

ドローンは現在、日本の法律上、人口が密集する都市部で飛ばすには様々な制限が課せられます。SFCはそれらの制限の範囲外に位置していて、比較的自由にドローンを飛行させることが可能です。緑に恵まれた広大なキャンパス内でドローンを飛ばし、同じ場所で研究ができるという類い希なるメリットがあります。
ご存じでしょうか。日本のインターネットの発展は、環境情報学部の村井純教授たちの尽力で、アメリカからインターネットの接続をSFCを経由して日本各地とつないだことに始まります。約30年前のことです。当時、SFCは、日本と世界との間で膨大な情報をやりとりする貿易港となりました。同時にインターネットに関する研究と運用の中心的な拠点となり、そこに多くの研究者がやって来ました。
同じように、ドローンの拠点としてSFCをオープンにしていくと、世界中の研究者がやって来てドローン研究に取り組む意味が出てきます。可能性を広げるためにも、SFCともっと協働していければと思っています。

テーマは常に「次のテクノロジー」

投資家としての活動はライフワークです。ただし投資が好きと言うより事業を生み出すのが好きで、まだ見ぬ未来をテクノロジーで創っていくことに生きがいを感じています。SFC卒業以来ずっとそのために自分の時間を捧げたいと思ってきたので、テーマは常に「社会の基盤となる次のテクノロジーは何か」。現在は、その中心にドローンがあります。
みなさんにも、「未来を創る」ことを期待します。自分で考えて自分で創る。そして、リスクを取る。私も個人投資家として、社会的信用を含めて相当なリスクを取っています。しかし、それを恐れていては未来を創ることは難しい。ですからリスクを恐れず、「こっちへ来い」と引っ張るコアになってほしい、未来を創るイノベーターになってほしいと思います。
それはテクノロジーの分野に限ったことではありません。歴史のある世界で、伝統を守りながらイノベーターになるという道もあるでしょう。ディスラプト(破壊による変革)とイノベーション。SFCの学生が、既存の業界でも、未知の業界でも、そういう動きを起こせる先導者になっていくと、社会はもっと面白くなっていくのではないかと思っています。