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2015.01.13

育つ力と育てる環境|太田喜久子(看護医療学部長)

南の夜空に“オリオン座”とそれを囲む“冬の大三角”、“冬のダイヤモンド”が輝く季節となりました。星空の下では、畑の野菜が霜をかぶり、ひっそりと寒さに耐えています。
 昨夏から「農業体験農園」に家族が通い始め、時々その手伝いに行くようになりました。農業経験は全くなしですが、園主である校長先生の手ほどきを受け、講義を受けて実習することを繰り返しながら野菜を育てていくのです。
 農具の使い方、肥料の混ぜ方、農薬の使い方などすべてのことを教わっていきます。ビニールの敷物であるマルチや、野菜を守るための寒冷紗などはじめの言葉も知りました。9月はじめには茶色一色で何もなかった畑に畝をつくり、苗を植え、種を播き、10月に入ると種から成長した葉を間引きするまでになりました。どれを残し、どれを抜くのか、ほんとにこれでよいのか少しドキドキしながらの作業でした。10月中旬過ぎには、一面緑の畑になったかと思ったら、11月には森のように繁り、足の踏み場も困るほどで、野菜の成長の勢いに目を見張るようでした。
 ブロッコリーやカリフラワーは葉と茎ばかりが伸びていくのでどうなるかと思っていたら、60日くらい経つと、おなじみの姿の花蕾が表れてきました。白菜は葉が四方にいきよいよく広がり、そのまま伸び続けるのではと心配するほどでしたが、50日過ぎたころから広がっていた葉が中心に向かって結実していくのです。大根はわずか数ミリの吹けば飛ぶような種だったものが、90日も過ぎると、立派すぎる葉を抱えながら、土中から10センチ、20センチと頭をもたげてきます。早く収穫してと催促されるように大根引きをすると、2キログラムを超すまっすぐの白い姿が現れた時は、感激も一塩でした。出来た野菜は、よくお店で見かけるものよりはるかに大きく、どれも香りよく、みずみずしく、旨みたっぷりのものばかりで、野菜のおいしさを堪能しました。さらに食べて頂いた方々からも喜ばれると、少しばかり誇らしくなります。
 1グラムの土には約1億個の微生物が活動しているそうです。野菜に適した畑の土はpH6.0~6.5に保つように肥料で調整し、さらに、野菜が吸収した肥料分を補い、微生物が元気でいるように土壌環境を維持することが重要なのだそうです。 
 校長先生の教えに感謝しながら、良い種や苗があり、肥沃な土壌と手入れがあれば、素人でも立派でおいしい野菜ができるのだということを実感した、貴重な体験となりました。
 しみじみ感じるのは、種は自ら育つ力をもっているのだということです。そこに健全な環境があれば、それぞれのスピードやそれぞれなりの成長の仕方でのびやかに育っていきます。土壌づくりを大事に日々の仕事にも励みたいと、思いを新たにしました。