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2014.12.10

SFCはいつでもPROTOでありたい-ORF2014から|小川克彦(SFC研究所所長)

11月17日から22日まで、東京ミッドタウンでSFCのORF(Open Research Forum)2014が開催された。今年はSFCを卒業した脇田玲さん(環境情報学部教授)が実行委員長になったこともあり、今までとは一味違ったスタイルのORFになった。

 

そのひとつがORFウィークである。これまでは2日間の展示会だけだったが、今回は後半の展示会とともに、前半にシンポジウムや前夜祭も入れて1週間のイベントになったことだ。その前夜祭では、やはりSFCを卒業した濱野智史さんが率いるアイドルグループPIP(Platonics Idol Platform)のライブがあった。ペンライトをふる若者たちにまじり、アイドルライブを初めて観たおじさんやおばさんたちの中には、彼女たちのひたむきさに感動して涙ぐんでいる人もいた(本当です)。

 

もう一つの目玉は、展示のプラットフォームが木造の軸組みになったことである。これは各研究室の展示スペースの希望に合わせて、実行委員の松川昌平さん(環境情報学部専任講師)が独自のソフトでデザインしたものだ。少し狭くなってしまったブースには申し訳なかったが、木造の利点を活かして、学生たちがさまざまな工夫を凝らしている姿がとても印象的だった。

 

その松川昌平研究室の展示は想像を超えていた。木造ではなく、会場の天井までのびるパイプの足場をつくり、その上から印刷物が流れ出てくる。展示の迫力もさることながら、準備で足場を組んでいたのが専門の施工業者の人と思いきや、実は松川研の学生たちであった。特に女子学生のかっこ良さは見ていて惚れ惚れしてしまった。

 

女子学生といえば、湘南藤沢学会が主催する学生の研究発表で優秀賞を獲得したのが、高松奈々さんのお笑い芸である。JKの制服を着てお嬢様高校生を揶揄するネタを始めとして、現代社会をちょっと捻りをきかせて笑わせるのである。彼女のブースは黒山のような人だかりで、隣のブースがちょっとかわいそうだった。近ごろのSFCには少なからず芸能人がいるが、彼女のように芸を研究にしてしまうところが、SFCらしい芸人なのかもしれない。

 

さて、私の研究室(小川研)ではネットラジオのコンテンツをみんなで作るワークショップを行った。学生たちが六本木を歩いている外国人に電撃インタビューを行い、六本木の好きなところと嫌いなところを聞く。録音した会話は、六本木のデジタル地図に貼り付けられる。スマホを持ってインタビューされた場所に行くと、気がつかなかった日本のGood Newsが聞こえてくる。

インタビューした学生たちの英語をラジオで聞いていると、外国人よりも英語がうまい。もちろん、英語ネイティブでない外国人も多く、学生の多くは帰国子女ではあるが、そんな学生たちにはグローバル化なんてスローガンは無用のようえるのだに思。

 

最後に、ORF2014のテーマについてふれたいと思う。 脇田さんたちが考えた全体テーマが「PROTO-UNIVERSITY」である。PROTOとは細分化し最適化された構造になる以前の未分化な状態を示す言葉だそうだ。24年前のSFCはまさにそんな状態から生まれたのだろう。創世記に提唱されたビジョンをもとに、今日のSFCのプラットフォームが構築されてきた。 大学の未来を考えるセッションで講演された相磯秀夫先生のお話に創世記の熱気を感じたのは、私だけではないだろう。相磯先生が第0世代の指導者とすれば、現在の河添さんや村井さんや徳田さんはきっと第2世代で、今ちょうど脇田さんたちにバトンタッチする2\.5世代の時代といえるのではないか。 未来創造塾は新たなSFCのビジョンである。ただ、どんな大学にしたいのか、どんなSFCにしたいのか、と問われれば、私は「SFCはいつでもPROTOでありたい」と答えたい。