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2014.04.01

桑原武夫研究会

ITを駆使して、ビックデータ時代のマーケティングのエッジを歩く。

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<研究会名>
政策・メディア研究科兼総合政策学部 教授
桑原 武夫
専門分野:マーケティング、データ・サイエンス、ブランディング、クロスメディア戦略、 消費経験論

3つの柱を組み合わせて、マーケティングや消費者研究の可能性を模索。

私の研究会では、大きくはマーケティング、その中でも、ビッグデータ時代の、マーケティングや消費者研究の可能性を模索しています。具体的には、3つの柱を組み合わせて、学生たちは個人あるいはグループで研究に取り組んでいます。
1つはソーシャル・リスニング&マイニング研究。TwitterやFacebookなどのソーシャル・メディアに書き込まれる意見を収集・分析することによって、マーケティング戦略の策定に役立てています。カフェを例に挙げると、スターバックスコーヒーやタリーズなどの各ブランドが、Twitterなどで1日にどのくらいつぶやかれていて、どういう言葉(キーワード)と一緒に書き込まれるのかを探り、競合と比較しながら調査しています。

2つめはブランド・イメージの変遷を追跡し、そのメカニズムを探求するブランド・イメージ研究です。昨今のネット時代にブランドのイメージがどのように変遷し、現在に至るのか。さらに将来に向けて、それをどのように役立てるのか。継続的に行っているモニタリング調査をもとに、分析を行っています。2014年からはブランドの価値を財務的な視点で検証を行うプロジェクトにも取り組みます。

そして最後の柱が、最適なメディア戦略を探るクロスメディアの効果測定と研究です。どのようなメディアの組み合わせが一番効果的なのかをデータをもとに実証。メディア接触と購買に関するシングルソースデータを用いて、消費者が日々どういう新聞、雑誌、テレビと接しているのか。また、どういうホームページを見たかをつぶさに調査しながら、テレビや新聞の出稿データとあわせて分析も行っています。それにより、興味のなかった商品にユーザ(視聴者)が関心を持ち、購入する購買意欲のスイッチが入るタイミングも、これからの調査から分析することができます。

データ・サイエンティストとしての実践力を身に付けることができる。

研究会では、複雑で大量のデータを解析し、視覚化・パターン化できるデータマイニングを行っているので、マーケティング戦略の立案がしやすくなります。このシステム開発を、学生たち自らで行っているのが本研究会の特長です。注目を集める統計プログラミングソフトR言語を用いて、それぞれのテーマに合わせて開発を行い、より迅速で、正確なデータ収集ならびに統計解析を実現。またソーシャル・リスニング&マイニングなどの、私が担当する新たな授業も今年からスタートし、その際のツール開発や、演習の指導などに学生たちのプログラミング技術が活用されています。学生たちは、複雑で、大規模なデータと格闘しながら、データ・サイエンティストとしての実践力を養っています。

不確実な社会に役立つ力を身に付け、多方面で活躍しています。

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学生たちは、研究に没頭するがあまり、ともすると1つの価値に陥ってしまいがちになります。そこでサブゼミでは、自分の考え方を相対的に見つめ直せる書籍を課題として取り上げて、自ら発表します。こうした輪読は、消費経験をテクストとして読み解き理解する解釈的な方法を身に付けることができます。
研究においては“実証”を、輪読を通じては“解釈”という異なる2つの視点を併せ持つことで、複雑な時代の市場や消費の奥行きを捉えることができます。
私は、消費者研究という領域の中で、このことを“エッジを歩く”と表現し、新しい発見をもたらす中心的なルートだと考えています。
この研究会の卒業生は、広告代理店・テレビ局やコンサルティングからITベンダー、メーカーまで、実に様々な分野で活躍しています。最近では銀行・商社、金融業界をめざす人も少なくありません。

 SFCでは、学生たちが学問を組み合わせて、さまざまな研究に主体的に取り組んでいくのが魅力の一つです。それは、今日の不確実性の多い社会において、必ず求められること。私たちの研究会でも、エッジを歩くことで、学生たちは創造性の本質や、イノベーションを見出しています。