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2006.12.06

アラブ映画を追いかけて

SFCスピリッツ

アラブ映画を追いかけて

アラブ首長国連邦の若き映画監督たち
アラブ首長国連邦の若き映画監督たち。
第2回ドバイ国際映画祭にて。
佐野光子さん
アラブ映画研究者
2001年総合政策学部卒業、2004年政策・メディア研究科修士課程修了

アラブの映画を研究し始めてから6年が経ちました。昨年くらいからアラブ映画祭の企画・運営に携わったり、アラブ映画について書いたり話したりする機会が増えてきました。

現在はベイルートのセント・ジョセフ大学を拠点に、レバノン人学生に日本語を教えながらアラブ映画の研究・紹介を続けています。現地にいるメリットを最大限に活かし、大学の仕事との調整を図りつつレバノン内外のアラブ映画祭・上映会を渡り歩いて最新情報を入手しています。

現地の映画祭では大抵の場合、日本人は私一人だけです。研究を始めてまだ間もない頃から、とにもかくにも現場に飛び込むことを自分に課し、ろくにアラビア語も話せないくせにベイルートやカイロ、チュニスなどの映画祭に自腹を切って参加したり、コネもないのにフィルムセンターを訪問したりと、今にして思えば随分と無謀なことをやってきました。現地の映画関係者にしてみれば、得体の知れない極東の女性がいったいここで何をしているんだろうと奇異に感じたことでしょう。しかしその甲斐あって、今ではアラブ映画界のお歴々や映画監督の多くと顔見知りになりました。たくさん恥もかきましたが、こうやって築き上げた人的ネットワークは何物にも換えがたい宝です。

現在心血を注いでいるのが、来年3月に国際交流基金が開催予定の「アラブ映画祭2007」のエジプト映画回顧展です。エジプトはかつて世界でも有数の映画製作拠点でした。先日、作品選定のために映画祭ディレクターの方とエジプトフィルムセンターを訪問しました。一週間で30本近くのエジプト映画クラシックスを観ましたが、その作品群の質の高さ、豊かさにはただ目を見張るばかりでした。

アラブ地域は辺縁・辺境と見なされがちですが、私は世界のあらゆる場所が「中心」であると考えています。アラブ人も日本人やアメリカ人、ヨーロッパ人と同じように世界の「中心」に生きているのだということを、アラブの映画を通して日本の人々に実感してもらえたらと思っています。

→国際交流基金「アラブ映画祭2006」ウェブサイト

(掲載日:2006/12/06)