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2011.09.13

何を為すか~「問題発見」の先に見えたもの

SFCスピリッツ

何を為すか~「問題発見」の先に見えたもの

小笠原和美さん小笠原和美さん
福島県警察本部警務部長
1994年総合政策学部卒業

2011年3月11日、未曾有の大震災が多くの尊い命を奪っていきました。岩手県盛岡市の実家は被災を免れましたが、その揺れは私の人生は大きく動かすことになりました。発災当時警察庁の給与厚生課といういわば全国警察を支えるバックヤード部門にいた私は、発生の1か月後には震災対応の最前線である福島県警へ異動となりました。現在は福島県警のナンバー2として、人事、予算、広報等の責任を負いつつ震災対応と、そして終わりが見えない原子力災害への対応に当たっています。

学部卒業と同時に入った警察庁@霞ヶ関。全国転勤が伴う警察官僚という仕事は様々な経験と出会いを与えてくれました。1年目の兵庫県警勤務では、制服での交番勤務から刑事として逮捕、取調べ、家宅捜索(ガサ)等の捜査活動のほか、阪神淡路大震災発生後は犠牲者の検視業務に従事し、無言の亡骸と数多く向き合いました。その後も東京、栃木、大阪、N.Y.と10回前後の異動、引越しを繰り返し、暴力団対策、薬物対策、汚職・知能犯取締り、外事警察、国際テロ対策、警察大学校教授といった様々なジャンルで、係長、課長補佐、課長、教授などポジションを変えながら仕事をしてきましたが、常に「何が課題か」「自分は何を為すべきか」という問いと向き合ってきました。

今の私の仕事は福島県民の安全を守ることですが、性犯罪に関する二次被害の防止や被害申告促進のため、大学や学会など部外での講演活動にも積極的に取り組んでいます。SFCでもこれまでに3回講義をさせていただきました。少しでも多くの人に性犯罪への誤解や偏見に気付いてもらい、正しい知識と情報を持ってほしいからです。

小説やドラマの中では「警察キャリア」というポジションがデフォルメされて描かれがちですが、評論家ではなく、地に足を付けた具体的かつ実効性のある施策を打ち出し、軌道に乗せていくことが私たちに課せられた使命だと思っています。肩書ではなく「『何を』為すか」が重要だという思いは、SFCでの4年間で求め続けられた「問題発見の姿勢」が導いてくれたものだと確信しています。

(掲載日:2011/09/13)