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2011.08.10

人間と強く関わること

SFCスピリッツ

人間と強く関わること

山本真郷さん山本真郷さん
富士フイルム(シンガポール現地法人)
2002年政策・メディア研究科修士課程修了

私はイメージング事業(写真・映画ビジネスの総称)の東南アジアでのマーケティング責任者としてシンガポールに駐在しております。シンガポールから周辺諸国を飛び回る忙しい毎日ですが、アジアの映画界を牽引するエリック・クー監督との交流を深める機会があり、その結果、監督の新作「TATSUMI」のプロデュースに関わる機会に恵まれました。

第64回カンヌ国際映画祭のオフィシャル・セレクション(ある視点部門)に選出されたのでご存知の方もいらっしゃるかも知れませんが、本作品は「劇画」の提唱者で日本のオルタナティブ・コミックの第一人者として知られる辰巳ヨシヒロ氏の半生が描かれた「劇画漂流」と同氏の短編作品を織り交ぜた長編アニメーション映画です。声優には大先輩でもある俳優の別所哲也さんにご参加頂き1人6役を演じて頂いています。アニメーション映画としてカンヌのオフィシャル・セレクション選出は同映画祭史上13作品目、日本語によるアニメーション作品という意味では2作目となりました。

本作品は9ヶ国もの多国籍なメンバーで構成されたプロジェクトでしたが、エリック・クー監督はスタッフとフラットに体当たりで創り上げていく制作スタイルだったので、監督やスタッフの方々ととことん議論し、本格的な国際的協働作業(国際共同制作)となりました。人間と強く関わった、とでも言いますか。バラバラに散った点が集まり、矢のように一直線になって突進んで行くような貴重な体験でした。「人間と強く関わる」というのは、振り返ればSFC時代に研究会(桑原研)やプロジェクトで学んだ姿勢・精神です。私が今回映画制作に関われたのも、良い仲間にめぐり合えたのも、自分に正直でいられるのも、好奇心を持って社会と積極的に向き合えるのも、考えてみればSFCで培われた感覚基盤のおかげと思い、SFCには感謝の気持ちで一杯です。だからこそ、在学中の皆さんには沢山の人・プロジェクトに積極的に関わって欲しいです。その経験はきっと後で活きてきますから。

最後に、映画「TATSUMI」の日本公開は未定ですが、機会がありましたら是非ご観賞下さい。

『TATSUMI』
監督/エリック・クー、声の出演/別所哲也、辰巳ヨシヒロ
クリエイティブ・ディレクター/フィル・ミッチェル
プロデューサー/タン・フォン・チェン、フィル・ミッチェル、フレディ・ヨー、エリック・クー、ギャリー・ゴー
アソシエイト・プロデューサー/山本真郷
音楽/クリストファー・クー、クリスティーン・シャム
音響監督/佐藤和生
製作/Zhao Wei Films、Infinite Frameworks
海外配給The Match Factory社Website http://www.the-match-factory.com/films/items/tatsumi.html

(掲載日:2011/08/10)