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2005.04.25

日本人の味覚|徳田英幸(政策・メディア研究科委員長)

食の好みは、人間の成長過程において、18才までに確立されるらしいとよく聞く。この理論の裏づけがあるかどうかはしらないが、私としては、かなり納得している。

私は、生まれも育ちも東京で、そばやうどんのつゆの色が黒くても一向に問題はないが、関西からこられた人は、よく関東のそばやうどんのつゆの色の濃さにびっくりしたということを聞く。一方、私の方はクリアなうどんのスープだと食が進まないといったこともなく、四国の讃岐うどんの方が関東のうどんよりコシがあって美味しいと感じる。

私がカナダで博士課程の学生だった頃、大学のCCNG(ComputerCommunications Networks Group)の研究仲間を我が家に招待して湯豆腐を食べた時がある。その時の1人のカナダ人は、湯豆腐とコークがベストマッチだといいだした。湯豆腐をつけるポン酢と生姜とコーラが非常に合うというのである。もっとも、お酒の飲める別のカナダ人はやはり日本酒がベストといっていた。どこでどうコークと湯豆腐が合うのかは、おおいに議論になった。つまるところのその人は、小さいときから朝昼晩いつもコークを飲んでいて、あらゆる食材とコークは合うように感じて育ってきたらしい。また、カナダでは一部の人であるが、ビールに塩を入れて飲む人たちがいる。これは、日本人が枡酒に塩という組み合わせで飲んでいることやメキシカンがテキーラのグラスの淵に塩を塗って飲むことと通じるところがある。私も何度か試したが、塩を入れた時に泡立つぐらいで、ビールの味が引き立つという感じはしなかった。

さて、今学期から、SFCのファカルティクラブがイタリアンレストラン「タブリエ」になった。この案が決まった頃、小島学部長が、なかば冗談交じりに、もうそばとか、うどんとか、丼モノは食べられないの?醤油味はもう食べられないの?といった質問をしていたのを思い出す。新ファカルティクラブがスタートしてしばらくたつが、滑り出しは好調であるように見える。しかし、毎日食べている側の私たちはどうであろうか?

私自身学生諸君とよくファカルティクラブを使っているが、ある大きな変化に気がついた。私はイタリアンも好きであるし、パスタなどは大好物であった。しかし、週に何回もイタリアンを食していると、体にオリーブオイルが蓄積していっているようである。最近は、夜はイタリアンを避けたいなと私の体がいうのである。さすがに、毎回のイタリアンは私のような者にもつらいようだ。そう、夏には、あっさりしたざるそばや冷やし中華も食べたいのである。

やはり、私の体には「日本の味」が刷り込まれていて、あるスレッシュホールドを超えると、必然的に足りないものを体に補給しようとするようである。まだ、1ヶ月もたっていない状況でこのような変化を体感してしまい自分自身もビックリしているが、ぜひ「日本の味」を忍ばせたバラエティあるメニューでファカルティクラブを充実させていって頂けることを願っている。

(掲載日:2005/04/25)

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