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2005.05.24

私のカバン遍歴|吉野肇一(看護医療学部長)

ゴールデンウィークなるものが終ってほぼ2週間。

来ました,来ました,ついに,おかしら日記の依頼が。

今年のゴールデンウィークも例年どおり,半分は国際学会で失われた。日本をはじめ,この時期に国際学会が多いのは,北半球では,ほぼ,どの国もベストシーズンだから仕方がない。

でも,今年のゴールデンウィークは良かった。何がって? おかしら日記の依頼がなかったのだ。締め切りの近い原稿書きのプレッシャーって,何年経っても変わらない。

それでは,本論の鞄へ。本来,僕は,実は,鞄好きなのです。たくさ〜ん,持っています。

まず,経時的にいってみよう。

小学校はランドセル,中学校は白色ズックの肩掛けかばん(皮ではないので平仮名,念のため),高校からは黒の手提げ鞄(ここまでは,男子は皆同じだと思う),大学ではボート部だったので運道具の入ったボストンバックが僕の定番だった。

卒業後,医師になって長い間,車通学・通勤が多く,定番鞄は持たなかった。そのうちに車道路事情の悪化,酒気帯び運転厳罰制などで電車通学・通勤をせざるを得なくなり,定番鞄を持つようになった。

30歳代後半に持ったイタリア製のワインカラーで光沢のある洒落た(と確信していたが)薄い,書類入れ風なものに始まり,オーソドックスな学者風の分厚い黒鞄,アタッシュケース,パイロットがよく使っている上蓋のものなど,それぞれを数個経験した。そのうちに,ノートパソコンが出現し,自分の加齢現象もあって,事態は一変してしまった。つまり,重いPCを60歳代の者が抵抗なく持ち運ぶには,手提げでは無理で,リュックザックか肩掛けとなる。現在,両方ともに活用しており,前者のほうが楽ではあるが,ちょっと取り出しにくい,混んだ車内では他人に迷惑になりやすい,四十肩にはつらいなどの短所がある。

鞄とPC関連で,世の中が変わったもう一つは,学会で配布されるいわゆるコングレスバックであるといえる。咋今のコングレスバックの多くが,やや大型の手提げ・肩掛け両用で,PC保護のクッション入りのものである。これを受け取ったときは何か使い勝手が良さそうなので,大事に使おうと思い,事実,学会場では使い込む。でも不思議なことにその学会が済むと,まず使わない。原因は,PC運搬には良いが,他に書類等を入れるのにはやや薄いということと,学会によっては学会名がバック上に明記されていて気恥ずかしいということによると考えられる。しかし,鞄好きの僕なのでこのようなバックを捨てることができない。だから納戸はこれらバックであふれている。僕が鞄好きということは家人も知ってはいるが,それでもみかねて時々,勝手に,ただし巧妙に捨ててくれているので助かる。

家人(今は,家内と末娘の二人)も,これまた,実は,鞄好きなのだ。いわゆるブランド品をせっせと買い集め,楽しんでいる。僕と異なるのは,それらをせっせと惜しげもなく捨てることだ。たまに,運良く,彼女らがそれを捨てる場面に僕が出くわすと,僕が,職場でのみ使うという約束で,その中で使えそうなものを物色し,掘り出しては再利用させてもらっている。

僕は遺失物の多い人間だが,鞄だけは,いくら酔ってもなくしたことはない。酔ったときは,大好きな「カバン,カバン」と叫んで帰路につくことにしている。この,「カバン,カバン」という響きが,僕は大好きだ。

多分,人間って誰でも鞄好きなんだろう。とくに日本人は好きかな。

蛇足: 前回の日記『新SFCファカルティクラブ(4/14)』が掲載されてまもなく,同日記で書かせていただいた「マダム」からご丁重なお手紙を頂いた。彼女は塾員であり,同所のウェートレスはSFCの学生とのことです。日記を読み直して,「ホッ!」

(掲載日:2005/05/24)

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