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2005.06.23

「クール・ビズ」雑感|吉野肇一(看護医療学部長)

12日前の10日,梅雨入りが関東甲信越に平年より2日遅れて,でも本州では一番早く宣言された。当時,梅雨っぽかったのは台風4号の影響でじゃないのぉ?という声も聞かれたが,そうかもしれないと思うほど降らない。特に週末は好天が続き,庭の手入れやゴルフに好都合で,とめどなく嬉しい。でも,今朝は本格的に降った。

『おかしら日記』編集者より今回は,「時事ネタで」というリクエストが来た。この「時事ネタ」というのが,結構どころかかなり難しいであろうことをうすうす感じていたが,実際その場面になって,改めてその「いやらしさ」を実体験した。つまり,湯水のようにたくさんある話題のなかから何を選ぶか,どれがサーっと(政治的な配慮なしに),問題なく流せるテーマであるかを慎重に検討する必要が,いやがうえにもあるということ。

この夏,お上の先導で「クール・ビズ」なるものが始まった。環境省地球環境局(このような仰々しい局があるとはついぞ知りませんでした)のホームページに,その経緯が載っている。その一部を原文のまま引用する:「28℃の冷房でも涼しく効率的に働くことが出来るような“夏の軽装”を“COOL BIZ-クール・ビズ-”と名付け,推進していきます。」

そこで,見慣れない英単語”biz”について辞書に当たってみる。Businessの短縮形,口語・俗語体で,職業,商売の意。用例として,show bizとか,”Good biz!”(英話,よくやった・でかした)とあった。いずれにせよ,英語圏の人が”cool biz”を省エネ用軽装と解すことは考えにくく,カッコいい(イカす:半世紀前の裕次郎時代用語)職業・商売と思うかもしれない(ここは看護医療学部英語担当の杉本・ハーディ両君によるチェック済み)。それにしても,このような造語をする勇気に,ある種の畏敬の念を抱かざるを得ない。また,これまでの新聞用語では,2語から成る複合語には語間に「・」を入れないことが原則であった。ただし,この原則は「インフォームド・コンセント」あたりから崩れ始めている。

本論の「クール・ビズ」に戻ろう。四半世紀前の大平総理時代に,「省エネルック」とか称して半袖スーツが,後に総理大臣になられた羽田さんを中心にして喧伝されたものの,あわれ即ポシャった。あのダサイ,不細工な半袖スーツをわざわざ買い求める人が皆無であったのだ。それでも世の中には異常にしぶとい人がままいるので,あの半袖スーツを大切にたんすの奥にしまっておき,今回の「クール・ビズ」で復活させた光景を,僕は懸命に探してはいるが,いまだ発見してはいない。とにかく,今回の「クール・ビズ」は,あのときよりははやるだろう。なぜかというと,基本的にはネクタイと一番上のボタンを外せばよいわけで,元手がかからないことが大きい。もちろん,それ用のシャツの着用が望ましいことは知ってはいるが。

「クール・ビズ」スタイルを構成するもう一つの要素,といってもネクタイ外しに比べると圧倒的に小さいものであるが,「シャツアウト」にも触れてみたい。「シャツアウト」とは,小泉首相が「クール・ビズ」導入初日に,沖縄のかりゆしウェアの裾をズボンからアウトして民衆を先導したあのスタイルである。こういう僕は,以前からこの「シャツアウト」大好き人間で,許される限りこれを愛用している。フワフワとして,おへそ辺りの空気が常に新鮮なものに交換されて気持ちがよく,かつ,実に楽なのである。ちょっと前まではゴルフ場では嫌がられてきたが,現在では完全に市民権を取得しているので,僕は,藍ちゃん同様,おへそにも緑の美味しい空気を満喫させている。でも,僕の場合,まもなく前期高齢者の仲間入りする年齢なので,まさか僕が「シャツアウト」に凝っているとは知らずに,「学部長,シャツが出ています」と,ご親切に,それも何回も注意してくれる看護医療学部の教員もいる。この際,ちょっと「いや,これはシャツアウト」とはいいにくいので,先方としては,学部長もいよいよ認知障害?と心配しているかもしれない。この「シャツアウト」も,たけの長さ・形式により「シャツアウト」用のものが用意されているが,僕としてはいわゆるルーズルックスであれば,あのだらだらスタイルに合うので広く活用している。最近,一閣僚がはっきり折り目のついたワイシャツを「シャツアウト」して非難を浴びているが,若者の中には同様のルックスで格好良く闊歩している姿も見かけるので,非難を受ける筋合いのものではないと思う。

僕としては,できれば来年も元気に,「クール・ビズ」「シャツアウト」でいきたい。

(掲載日:2005/06/23)

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