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2005.08.08

2030年の世界|徳田英幸(政策・メディア研究科委員長)

心身ともに疲れていれば、誰でも、あの名台詞のように「私は、貝になりたい」と思う時もあるだろう。でも、やはり私は人間として生まれ変わりたい。

実際、生まれ変わったら、どのような職業につきたいか? どんな人になりたいか? どこの国に住みたいか? はたまた、どのような人と結婚したいか? などいろいろ考えられそうであるが、ここでは「どのような時代に生まれたいか?」を考えてみよう。

なぜ、「時代」かというと、実は、7月9-10日にNTTドコモのモバイル社会研究所の大変面白い合宿に参加した。この合宿は、西暦2030年は、どのような社会になるかをbackward casting法でいろいろな人たちと考えてみようという企画であった。現在、開発されている科学技術の進歩などの予測ベースにforward castingする手法ではなく、2つの軸で、社会の形を4つに分割し議論した。1つ目の軸は、エネルギー消費が大幅に節減されるか、より拡大消費されていくか。もう1つの軸は、人と人とのコミュニケーションがより身近な人だけのコミュニケーションにかたよるような繭化が進むか、より開かれたコミュニティにむけて拡大していくかという軸である。

参加者の一人がそれぞれのモデルをうまく整理して特徴を分けていた。エネルギー消費の軸もコミュニケーションの軸も拡大していく部分が「カウボーイ型アメリカ社会」、一方、コミュニケーションは拡大するが、エネルギー消費は節約に向かうのは、「北欧ヨーロッパ型社会」。エネルギーは拡大消費するが、個人のコミュニケーションは繭化に向かう「たこつぼ型日本社会」、そしてエネルギーが節約され、コミュニケーションも繭化されるのが「ネオ江戸型社会」、とニックネームをつけた。

私が担当した「北欧ヨーロッパ型社会」モデルは、正式には「ネットワークLOHAS(Lifestyles of Health and Sustainability)社会モデル」と命名し、次のような特徴を挙げた。リアルな空間と密着したコミュニティや家族の再構築が進み、「人と人のつながり」の重要性とともに、環境負荷を意識した「地球環境とのつながり」の大切さに対する理解が社会全体に浸透する。例えば、コミュニティネットワークを通じての4R(Recycle, Reuse, Reduce, Refuse)運動が普及し、家庭や会社からの廃棄物は、激減する。また大規模センサーネットワークなどによりリアルタイム環境モニタリングが可能になり、社会における環境負荷がビジブルになる。

一方、量的拡大から質的向上への価値観の変化により、国際競争力も低下するが、オンリーワンの商品、技術、コンテンツ産業が活性化する。従来のマスメディア、パーソナルメディアに加えて、中間的なメディアが発達し、さまざまなネットワークコミュニティが形成されるが、社会全体でのネットワーク犯罪が増加する。この問題対しても、サイバー自警団のような組織の運動も活性化する。。。。(以下省略)

若い世代は、イケイケどんどん型のカウボーイ型アメリカ社会を望む人が多そうでもあるが、結構、引きこもってしまう若者を見ると「たこつぼ型日本社会」を望んでいる人もいるかも知れない。

私は、一度アメリカ型社会を経験した者として、今度生まれてくるならネットワークLOHAS型社会もいいのではないかと思っている。

(掲載日:2005/08/08)

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