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2005.03.17

卒業|吉野肇一(看護医療学部長)

前回のテーマ(「おかしら日記」2005.2.10)は,「入試」であった。看護医療学部は,出来立てのホヤホヤでありながら,一般入試のほかに,学士編入試,3年編入試,AO(admissions office)入試と多種のものを用意して,社会的・SFC的要望に応える必要があり,しかもそれらの時期が異なるため一年中,入試に明け暮れている実情を述べた。その際,それらが,出来立て学部ゆえにすべてが無から始まったのである。

今回の「卒業」は,幸い,1年に1回であるが,これまたわれわれにとって初めての経験となる。この初回ということに,さらにプレッシャーがかかるのが,その前日に行われる看護師国家試験の発表である。これは,医学部同様,professional schoolの宿命で致し方ない。

では,学部長にとって,この「卒業」はどういう意味合いを持つものであろうか? 一言で言えば,「挨拶が一つ増えた。ただし,この挨拶は学部歴史上,初回のものだぞ。」ということになる。この日記のおかげで,挨拶の大体の構想がいち早くできた。このようなタイムリーな主題を選択してくれた編集員に,謝謝!

かなり前,塾大学卒業式塾長式辞で,卒業式を英語で ”commencement” と言い,その意味は完結,完了とか終結ではなくて,「開始」である,というのがあった。僕は,へー,いいことを言うナと感心した。感心したのは僕だけでないらしく,その後,この言葉を塾外のいろいろな卒業式で耳にした。でも,最初に聞いたのが塾であることが嬉しい。辞書的には,卒業式は米語で,確かにcommencementであるが,卒業となるとcompletion of a course とも載っている。このように反意的な用語を,米国人自身はどのように使い分けているか興味おおありのところだ。卒業と卒業式を全く別個のものと考えているんだろうか? マーでも,日本人の日本語同様,多くの米国人もいい加減なんだろうな。

私学の良さの最大のものは,創始者の提唱以来,綿々と受け継がれ修飾もされている校是である。塾の場合は,「天は人の上に・・・」,「独立自尊」,「気品の泉源・・・」,「先導者・・・」,「航跡を・・・」,「ペンは剣よりも・・・」,等々である。これらから,何か一つ,式辞に入れることが一般的であることが塾風(三田風?) と言えよう。それによって式辞内容を考えやすいと思われがちであるが,それが逆に,意外と難しい。それは,これら文章化された校是を十分に咀嚼している自信を持つことが容易ではないから。

でも,この際,僕としては何か気の利いたことを,第1回目担当として言わねばなるまい。どれか,校是を一つ入れよう。そして,僕是(?) である「天才でない限り,人生は実力と運。実力は努力で,運は笑顔と謙虚さで手に入る確率が上がる。」でいこうかナ。

あと,数時間で校務NY往き機上人となる。流行作家の気分?

(掲載日:2005/03/17)

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