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2006.04.06

未来への先導|徳田英幸(政策・メディア研究科委員長)

3月29日(水)日吉キャンパスにて平成17年度慶應義塾大学大学院学位授与式が行なわれ、総勢1,574名の諸君が学位を授与された。今回は、3つの点で記念すべき式典であった。1つは、慶應義塾に大学院が1906年(明治39年)に設置され、今年がちょうど開設100年目にあたる年であった。2つ目は、法務研究科ができて、はじめて専門職学位が授与された。3つ目は、学位を授与された人がはじめて1,500名を超え、従来の三田キャンパスではなく、日吉記念館で式典が行なわれたことである。そもそも1906年という福澤先生没後数年しか経っていない時期に大学院が開設されたのは画期的なことであり、当時の意気込みが感じられる。

さて、お題の「どうなる日本!」であるが、大学・大学院での研究教育の視点から、2つのコメントをすることにしよう。

1つは、この国の未来を先導していく人たちの育成が重要な課題である。福澤先生の言葉に、「一身独立して一国独立す」といったことばがあるが、「すばらしい大学・大学院なくして、一国の未来なし」といったことを実感している。大学・大学院の役割は、きわめて重く、将来の「国のかたち」をおおきく左右するからである。社会における先端的な知識の生産を行なう場は、明治時代の大学からは想像もつかないくらいいろいろな場へと広がってきている。しかし、知の創造だけでなく、次の社会を担う人たちを育成する場としての大学・大学院の持つ重要性は、普遍的なものであるだけなく、ますます重いものになってきているといえる。大学・大学院の機能が劣化すれば、その国の将来は容易に想像できるものである。

もう1つは、この国の文化を継承しつつ、国際的競争力があり、活力のある国でありたい。先日、中国南沙にあるIT Parkで行なわれたIT Forumに招聘されて講演してきたが、中国の大学から参加された若い学生諸君や研究者たちからは、日本とは違った活力が感じられた。中国政府の要人たちにも堂々ときびしい質問を浴びせていたのは印象的であった。日本の大学生たちにも元気な人が多くいるが、ややもするとシャイであり、国際会議などでの発言もあまり得意ではない人がいる。やや大げさな言い方をすれば、国際社会における日本の発信力の低下へとつながっている根源かもしれない。自分の意見や主張をきちんと発言し、国際社会をリードできる人たちを育成していきたいと思っている。

SFCの大学院は、現在、2007年度からの学部カリキュラム改定にあわせた大学院カリキュラム改定作業が進行中である。未来社会を先導できる人たちの育成にむけて、1906年当時の熱意と活力を持って望みたいと思っている。

(掲載日:2006/04/06)

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