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2006.03.17

女性が鍵を握る|佐藤蓉子(看護医療学部長)

日本の人口はいま、65歳以上の高齢人口が総人口の17%を超え、2006年の12,774万人をピークに減少に転じたといわれている。

高齢社会、少子化、人口減少などのニュースをみていると、日本社会の活力が失われて衰退の時代が始まっていると憂鬱な気分になるかもしれない。

しかし、これらの状況は、疾走し続けてきた社会がある種の落ち着きを取り戻して、身の丈に合った歩き方をする方向への転換の好機でもある。

私が職業を持って働き始めた昭和40年代は、日本が高度経済成長の波に乗って絶好調で走り続けた時代と重なる。経済は毎年急激な右肩上がりの成長を続けたし、町は活気に満ちていた。小枝のように細いモデルがミニスカートを流行させ、細身の娘は勿論、太めの娘も大人の女もミニをはいて通りを闊歩した。そういう時代も活力に満ちて刺激的ではあったが、経済成長は私たちの生活時間を変えてしまったように思う。みんな忙しくなった。いまでは、電車に乗るときにも降りる人をゆっくり待っている人は少なくなった。乗る人降りる人が肩をぶつけ合いながら同時に行動するようになり、待つゆとりを失っているようにみえる。斯く申す私も待てない人種のひとりになってしまった。

高齢者が多くなった社会は、自由にできる時間を多くもつ人が増えた社会である。人生の黄昏のときに手にした自由時間をできるだけ豊かに楽しみたい。これからは、そんなゆっくりゆったりの時代になるだろう。ゆったりした時間を趣味の活動や家族・友人とのつながりを楽しみながら互いに支えあうことに費やすことができれば、そういう社会は若者にとっても生きやすい社会になるだろう。そこでの快適さを保障するためのさまざまなツールやシステムをSFCで創造・開発している。

60年余も戦争をせずにみんなで蓄積してきた社会の豊かさと知恵の結晶を享受できる社会を創造する。そのことを考えるために、もっと女性の力を活用したらいい。

女性は本来、次の世代を生み育てる性である。慈しみ育てるという女性性は、社会の将来像に大きく影響を与えるような企業の中枢、行政の中枢でもっともっと活用されるべきである。

それこそが、「どうなる日本」というある種の危惧への回答だと思う。どう“なる”ではなく、「どう“する”日本」への回答はやはり女性性の尊重、もっと言わせていただければ女性の活用が鍵を握ると思っている。

(掲載日:2006/03/17)

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