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2006.02.16

いまこそ東アジア戦略の構築を|小島朋之(総合政策学部長)

「日米関係が緊密になれば、中国、韓国、国際社会との良好な関係を築ける」。靖国神社参拝問題をめぐって悪化した日中、日韓関係について、小泉総理はこう語り、靖国問題も「長期的にはそんなに大きな問題じゃない」と楽観視してみせる。

日本外交にとって日米同盟が基軸であり、「日米関係が緊密」であることがなによりも重要であることはたしかであり、その意味で小泉総理の認識はその通りである。しかし、日米関係が緊密」であるにもかかわらず、現実は中国や韓国とは「良好な関係」とはいい難い。そして靖国問題は「長期的にはそんなに大きな問題じゃない」ことはたしかであるが、短期的には問題を惹起したことも認めてもらわなければならない。

いまや中国や韓国を含む東アジア地域は日本にとって、米国と匹敵するほど重要になっている。日本の対外貿易総額の中で対米はせいぜい20%程度であるのに対して、東アジアはすでに50%を占めている。その東アジア地域がいま協力から統合への動きを本格化している。昨年12月にはASEAN10カ国日中韓3カ国にインド、オーストラリアとニュージーランドを加えた16カ国が東アジアサミットを初めて開催し、将来の「東アジア共同体」実現に合意したのである。そしてその将来に決定的な影響を及ぼすのが、地域のGDP全体の90%近くを占める日中韓の3国の協力である。いまのようなギクシャクした関係はいかにもまずい。

対中、対韓政策は日米同盟を基軸としながら、協力・統合に向かう東アジアに対する外交戦略の中で進められなければならない。しかし残念ながら、日米同盟と対中・対韓政策をつなぐ東アジア戦略が不透明なままであった。ポスト小泉政権に求められる最大の外交課題は東アジア戦略の構築にある。

こうした戦略の構築、政策の立案と実行にかかわる先導者が、SFCから輩出することを期待したい。今年の慶應義塾大学の一般入試では受験生が全体として増加したが、SFCも同様で、総合政策学部は446名、環境情報学部は236名、看護医療学部は198名の増加である。期待はさらに膨らむ。

(掲載日:2006/02/16)

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