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2008.04.17

とっておきのシャープペンシル|金子郁容(政策・メディア研究科委員長)

手紙やメモを書いたりするのに、手書きをすることがめっきり少なくなった。SFCの学生たちを見ると、ノートをとるのにPCに入力している人が目立ってきている。その方がなにかと便利なのだろうが、講義をしている側からすると、いくらか、違和感があるものだ。

文房具の売り上げは随分と落ちているのだろう。文房具屋は町の風景からなくなるのであろうか。普通部に通っているとき、駅から学校までの商店街に文房具屋が二軒あり、クラスの仲間の間で「日吉堂派」と「小川堂派」に分かれて、言い合ったのが懐かしい。思い出といえば、私の母親は、かなりの文房具マニアだった。マニアというか、とにかく、文房具が好きで、消しゴムから、鉛筆から、定規から、シールから、使いやすい、デザインがよいものを徹底的に探し、気に入ったものは大量に購入し、そればかり使っていた。亡くなってから、もう、十六年になるが、ものによっては、まだ、母親のストックを私が使っている。

考えてみると、私がボールペンは嫌いで、鉛筆の方が好きなのは、母親の影響だろうということに気づく。ただ、鉛筆は、削らないといけないので、普通持ち歩くのはシャープペンシルとなる。テクノロジーによって、随分と芯の材質が改良されたようだが、それでも、芯が折れやすいし、芯の補充のとき使いにくい。

そこで登場するのが、鉛筆の形をして、鉛筆と同じ位の太さの芯が出て来る特製のシャープペンシルだ。そんなものはあるのかと思う人が大半だろう。多分、持っている人はほとんどいないと思うが、KREUZERというマークが入った、青と白のデザインのしゃれた胴体をもつ“鉛筆シャープペン”が存在する。これが、使いやすく、なんともいえない暖かみがある。かなり探したが、今では、売っている店は見当たらない。母親の大量のストックも、さすがに、尽きて、私の手許には最後の数本があるだけになった。(どなたか、売っている店をしっていれば、是非、教えてください!)

(掲載日:2008/04/17)