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2010.02.04

新年を迎えて:時間をどう捉えて、どう生かすか、「還暦」の年に考える|高木安雄(健康マネジメント研究科委員長)

ミレニアムの大晦日、カウントダウンに湧くアメリカ西海岸の話である。私の日本人の友人はアメリカの友達らと、ニューヨーク時間から始まるカウントダウンに盛り上がり、次いでシカゴ時間にも大騒ぎをし、やがて自分たちの西海岸時間のときにはお互い疲れてしまい、友人が「中国ではこんなカウントダウンを3000回もやっているんだなあ」と呟いたら、アメリカの友達らはそれぞれ、「俺の先祖はアイルランドらしい」「私はハンガリーよ」と遠い先祖の話になったという。独立宣言して300年にも満たないアメリカからすれば、ミレニアム問う時間軸の話はヨーロッパに戻って語るしかないのだろう。

子供の時間軸でもおもしろい経験がある。娘が小学生のとき、「お父さんは縄文時代に生まれたの?」と質問されて、子供の時間軸に驚いたことがあるが、初めて日本の歴史を学んで、縄文人=昔の人=お父さんと繋げてしまったのだろう。論理的には繋がっても、それぞれの時間の「量」が異なること、量が違えば「質」に変化が起きることを知らないとはいえ、可愛い問いかけに思わず微笑んでしまった。

さすがに「還暦」ともなると、こうした過ちから開放されて、より歴史を確実に捉えることができるようになる。新しい世紀とはいかないまでも、新年を迎えて、「そうか、今年は還暦か」と自分の時間軸を考える貴重な時間を持つことができた。特に1950年生まれの私にとっては、ミレニアムは50歳、2010年は還暦と10年ごとの時間軸を意識せざるを得ない。還暦ともなると、100年という単位の時間を自分の時間軸の意識の中でおおよそ捉えられるようになる。自分の意識の中で小学校を過ぎた50年間は確実に捉えることができ、「そうか、この2倍が100年か。3倍が150年か」と思いをめぐらせて、年をとってよかったと思える瞬間である。

さて、こうした時間軸で捉えたものをどう生かしていくか、まだ時間はたっぷりあると思うか、残る時間は少なくなったと焦るか、この1年の課題にしよう。

(掲載日:2010/02/04)