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2010.06.11

空飛ぶ車(1)|村井純(環境情報学部長)

遅ればせながらだが、2010年4月4日にSFC20周年の式典が行われた。このイベントに関わってくれたすべての人に感謝したい。ところでこの時に私のスピーチでは宇宙飛行士として二度のスペースシャトルでの飛行を経験した毛利衛さんが慶應の科学者のために話していただいたお話しを紹介した。そのとき見せてくれた毛利さんが撮った昼の地球の写真は、宇宙から地球を見ている時に海から陸へという人の進化や自然の環境を考えるときのシーンだという。そして、次に見せてくれた夜の写真は全体では見慣れた夜の月のように美しかった。アメリカをズームした写真では、ニューヨーク、シカゴ、サンフランシスコなどの大都市の光を見つけることができた。そして、はるかに狭い日本をズームした写真を見せてくれた。我々はそこで息を呑んだ。そこには、小学校の頃から馴染んでいた「日本鉄道路線図」の形が、光となってくっきりと浮き上がって見えていた。毛利さんは、この景色を見て、科学技術はすでに地球環境の一部をしっかりと担っている、と感じられたとおっしゃった。オーディエンスである塾の科学者達はとても感動し勇気づけられた。

夜の地球で輝く光も、鉄道と共に発展した都市もさまざまな人類の夢を追求した成果に違いない。もちろん鉄道も電力も科学技術の発明だけでは走り続け、輝き続けることはできない。夢を実現するためには技術の力だけでなく、多様な力が連結しなくては実現しないし、持続しない。そのための力の輪を創り出すこと、その底力を発揮することを理念として、また構造的にも実績としても、持っているのがSFC。

11月のおかしら日記で「空飛ぶ自動車」に触れた。まだ実現できてないじゃないかという、だんだん稀少価値となってきた20世紀から続く「21世紀の夢」だ。なぜできないのか?

技術的に飛べないことはない。飛行機だってヘリコプターだって飛んでいる。オリンピックの開会式だって相当前から人が個人の「乗り物?」で飛んでいる。私たちの生活している空間に新しい乗り物が飛び交うためには大変な議論と意思決定が必要となることは誰にでも理解できる。しかし、いくつのどんな課題を解決すれば実現できるのか?課題が多すぎて実現できないのか?実現する必要がないのか?実現すべきでないのか?

しばらくいろいろな方法で考えてみるので、みなさんも考えてみてほしい。まとまってきたらまたこの話題に戻ることにする。だから、タイトルが(1)になってるの。

(掲載日:2010/06/11)