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2011.02.07

慶應藤沢イノベーションビレッジ(SFC-IV)のこと|國領二郎(総合政策学部長)

少し前の話になってしまうのだが、昨年末の12月8日にルース駐日米国大使がSFCを訪問して下さった。専門が経営で、長らくアントルプレナーシップに取り組んできた私としてちょっと嬉しかったのが、訪問目的が日本の大学のベンチャー支援取り組みをご覧になりたいということだったことだ。もともとベンチャーのメッカであるシリコンバレー出身の大使は、キャンパスにきて、学生に熱く新事業創造を語ってからSFC-IV を訪問された。実はSFC-IVのことをご存じで、それを名指しで訪問されたいとおっしゃって下さったことに少しびっくりした。

人の入れ替わりの激しい大学のこと、ひょっとしたら、現役でも知らない人もいるかもしれないので、少し紹介すると、SFC-IVというのは慶應藤沢イノベーションビレッジという、ベンチャーインキュベーション施設のことである。看護医療学部に向かう道の右側にあるビルといえば思い当たる人が多いかもだろう。二階建て賃貸面積約1000平方メートルの施設で、(1)大学の研究成果を基に起業したベンチャー、(2)大学と共同研究等を行った又は行っているベンチャー、(3)大学から技術移転、技術相談・支援、経営相談・支援等を受けた又は受けているベンチャー、(4)(大学の教育・研究と深い関連のある)学生・卒業生ベンチャー、(5)大学の講座等を受講して起業したベンチャー、を対象としている。入居者リストを見ていただくと、研究室発ベンチャー、卒業生ベンチャーだけでなく、地域発ベンチャーや、大学との連携を求めて他所からやってきた企業などがいることが分かる。また、営利企業だけでなく、非営利として事業を開始している社会起業家も入居している。机一つから借りることができて、シャワー室などもあって快適だ。

(株)パンカクで説明を聞くルース大使
(株)パンカクで説明を聞くルース大使

このようなベンチャーインキュベーションもコミュニティ形成が大事だと思って取り組んでいる。http://blog.goo.ne.jp/sfc-iv/1  にブログがあって雰囲気がわかるのだが、ベンチャーが孤立しているよりも、一緒にいることで、専門家のアドバイスや大学、地域との連携をしやすくなるところが大きなメリットだ。助成などの情報も集約して入りやすい環境を作っている。また、慶應義塾OBや義塾の学生の支援に未来を見て下さるOBによる「メンター三田会」(http://mentor-mitakai.net/ )などが、強力にバックアップして下さっているのもありがたい。

SFC-IVを訪問されたルース大使は約一時間にわたって、入居ベンチャーを視察された。終始、楽しそうな顔で入居ベンチャーの紹介する新しい技術やコンセプトを見聞きされていたのが印象的で、最後に「This is exactly what Japan needs」とおっしゃってお帰りになっていった。大学の知と若いエネルギーが地域社会とともに、新しい価値を生み出すプロセスこそが、世界の問題を解決し、新しい雇用を生み出す。その取り組みを評価して下さったものと理解している。

いきなりベンチャーを起業して下さい、などと呼びかけても、そもそもベンチャーがどんなものかが分かりにくいのかもしれない。そんな学生はSFC-IVに入居しているベンチャーは折々インターン募集などをしているので、試してみてはどうだろうか。起業がそんなに甘いものではないことも事実なので、安易に煽るつもりはないし、結局大企業に就職するのでもかまわないが、別の世界があることも分かると思う。それを知って世の中に出るのも悪くない。問い合わせ先は慶應藤沢イノベーションビレッジ IM室(incubation@sfc-iv.jp)だ。

(掲載日:2011/02/07)