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2010.11.18

実りおおきORFの秋|徳田英幸(政策・メディア研究科委員長)

今年は、非常に暑くて長い夏が過ぎた後、寒い10月があり、11月になってやっと穏やかな秋らしくなってきた。毎年11月になると、恒例のOpen Research Forum (ORF)の追い込みで、研究室のメンバーはシステムづくりに忙しい。ORFを開始した当初は、キャンパスで開催していた。最近では、より多くの方々にSFCでの研究教育活動の成果を見て頂くために、六本木ヒルズや大手町オアゾといった都心の会場で開催している。今回は、SFC開設20周年ということもあり、これからのSFCを議論するセッションがいくつも企画されている。11月23日の夕方には、「これからのKEIOを考える―慶應義塾大学SFCのゆくえ」があり、外部有識者によるプレミアムセッションや11月23日午後には、現役やOBの学生たちによる「SFC20周年記念未来創造コンテスト:グランドファイナル」がある。 
もう1つ、我々が企画したものに「ケータイ未来コンテスト」が同じく11月23日の夜にある。幼稚舎1年生から大学院生までを対象にしたケータイ型端末の未来を描いてもらうコンテストの最終審査会が企画されている。

SFCは、開設時に我が国で始めて、1年生全員に推奨パーソナルコンピュータ(PC)を持ってもらい、授業や研究プロジェクトだけでなく、日常のキャンパス生活を支援する知的文房具として活用してもらった。今となっては、驚かれる人もいるかもしれないが、1990年当時「e-mailアドレス」という言葉はまだ定着しておらず、faxと混同する人すらいた時代である。学生諸君も、このアドレスは、どのように使うのかといった質問を受けた。また、1990年の推奨PCには、キャンパスと接続するためのモデムはオプションで、Ω館で取り付け講習会を開いたことすらあった。もちろんハードディスクや3Gのモバイル通信機能などなかった。

2010年、スマートフォンを推奨しようとすると、同じ知的文房具でも圧倒的な違いがある。いつでも、どこでも「つながっている」のである。キャンパスや友人あるいはスマートなモノたちと「接続する」という作業をせずに、自然につながり、かつリアルタイムにコミュニケーションやコラボレーションができるのである。学生諸君たちには、1990年当初のPCとは問題にならない処理能力をもった知的文房具を持ってもらうことになるのである。通信キャリアの中には、あくまでも電話の拡張版であると思っている方もいるかも知れないが、私としては、電話とはまったく違った「知的増幅器」としてのケータイ型の機器であると理解している。

実は、我が国では、通信キャリアのビジネス戦略の違いから、3Gと無線LAN機能(WiFi)を備え、Webブラウザをもったスマートフォンはなかなかマーケットに導入されず、欧米より数年以上遅れての参入であった。また、相変わらずSIMロックが解除された端末がほとんど販売されていないので、機器とキャリア、OSとキャリアをそれぞれ自由に選択することができないのが現状である。

この秋、やっと国内では、多くのスマートフォンが購入できる時代になった。SFCでは、SFC-SFSやGCをはじめ、多くのサービスがブラウザ経由でCNSから活用できる教育研究環境が整っている。PCだけでなく、自分の知的体力の増幅器として、スマートフォンを活用し、実りある秋を過ごして欲しいと願っている。

(掲載日:2010/11/18)