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2010.11.04

おかしらの臥待ちの秋|高木安雄(健康マネジメント研究科委員長)

年末の12月4日(土)に東北新幹線は八戸・新青森駅間が開業して、1982年6月の開業以来、29年目にしてようやく全区間が開業することになった。東北・仙台で4年間を過ごした者にとって感慨深いものがあり、早速、冬休みに青森の温泉に行く計画を立てている。1979年当時、下北半島の入り口である青森の野辺地駅から東京・上野駅まで特急で8時間もかかっており、ちょうど宮城の仙台駅が4時間の真ん中であったことを懐かしく思い出す。これが新幹線によって3時間半程度に短縮されるのであり、ぜひ乗ってみたいと思うのは人情だ。

東北新幹線が大宮・盛岡駅間で開業したのは1982年6月であり、1964年10月開業の東海道新幹線に遅れること約20年である。大宮・上野駅間がつながったのは3年後の1985年3月、そして東京・上野駅間の3.6kmをつなげて、東京駅乗り入れを果たしたのは大宮開業から10年後の1991年6月であった。
一方、東海道新幹線は、「ひかりは西へ」をキャッチコピーに1972年3月に新大阪・岡山間が開業、1975年3月には岡山・博多間がつながって本州の西を制覇し、九州まで横断したのである。東北新幹線はようやく新青森に到着するのは本年末であり、博多開業と比べると35年も遅れたことになる。
高度経済成長のシンボルとしてスタートし、その余勢で博多駅まで10年余で開業した東海道・山陽新幹線に対して、東北新幹線はバブル経済がはじけた1991年にようやく東京駅乗り入れを実現し、30年かけて本州の北に到達した計算となる。まさに東北地方の社会資本整備の遅れの象徴であり、臥待ち月の心境といえる。
ちなみに東北新幹線が東京駅に乗り入れた際、東海道新幹線と相互乗り入れして、新大阪発仙台行き等の列車も検討されたが、いずれの乗客とも東京駅で9割以上が下車することが判明して、見送りとなっている。それだけ東京の吸引力は大きいのである。

さて、東北新幹線が全区間開業して東北地方がどう変わるか、お互い新しい風を運びたいものだ。かつて夜行列車で上野駅に降りた団塊の世代にとっては、ふるさとが近くなった分だけ交流を深めることができよう。私も吉田拓郎の『旅の宿』の舞台となった青森・蔦温泉で北の旧友と温泉に入ることを楽しみにしている。

(掲載日:2010/11/04)