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2011.06.03

大震災の地を訪れて|太田喜久子(看護医療学部長)

菜の花や桜、水仙などいつもの年と同じようにさまざまな花が美しく風に揺れていた。そして、いつもだったら田んぼに水を張り田植えの準備をしているころなのに、まだ手をつけられた形跡がない。青い空と向こうに見える穏やかな海と、目の前に広がる一瞬にして津波に砕かれてしまった地との対比に息をのみ、言葉を失ってしまった。

無残な姿となった町を見るだけでもつらいのに、いま求められることに応えようと暮らしいる現地を拠点に東奔西走、毎日走りまわっている人々がいる。

大震災2日後には支援ネットワークを立ち上げ、介護職や看護職などの専門職ボランティアを全国から募り避難所や施設に派遣したり、さまざまな避難所や施設、在宅に必要な物資を届けたりしているのである。

この活動の活発さはどこからきているのかというと、車で人や物資をあちこち届けながら、日々変わっていく現地の状況を直接目で見て、何が必要か当事者から話を聞き、動き回りながら新しい変化とニーズを素早くキャッチしているのである。また、これまで培った人や組織とのつながりをフル活用し、友人や同僚のつながりはもちろんのこと、もともと全国的なネットワークを持っている強みがあるため基盤が広い。限られた状況においても、とにかくできるところからすばやく行動を起こすことをモットーに活動しているのである。

また被災地のあちこちで切実に求められているのはコーディネートできる力を持った人の存在である。物も人も情報もライフラインも整わず、困難山積みの状態の中で、いま何が起こっていて、何をしなければならないか、そのために使える資源はどのようにあるのか、これらを見定め優先度を判断し、人に伝え人を動かすことのできる人である。

このような行動力とコーディネートできる力、これらを併せ持つ人材はどのような教育や環境から育つのだろうか。これからの時代に求められる人材として、SFCが行ってきた実験と成果が生かされる時である。

(掲載日:2011/06/03)