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2011.06.20

3.11後のメディア|徳田英幸(政策・メディア研究科委員長)

日本社会が未曾有の大震災、津波、原発事故の危機に直面した際、我々が日常、何の不思議もなく利用していたTVやケータイなどの情報通信インフラに、いろいろな課題が見えてきたことをふりかえってみよう。

3.11の当日、私は、国立情報学研究所(NII)で開催されていた科研の情報爆発IT基盤成果報告会でのパネル討論にパネリストとして参加するために会場に行き、2Fで開催されていたデモセッションを見ている時に被災した。あまりの揺れの強さに、デモをされていた方々は、慌てて大型ディスプレイやPC用のディスプレイを倒れないように押さえていた。主催者側の判断で、デモ、テクニカルセッション、パネル討論のすべてが中止となり、多くの参加者が帰路についた。

東京近郊からの参加者は、JR、私鉄、地下鉄の各線が運行を取りやめていたため、帰宅することができず、NIIの会場で電車の運行再開を待っていた。私たちが帰宅しないことをいちはやく決めることができたのは、NIIが避難場所を提供してくれたことと、家族全員が無事であることの確認が取れていたことによる。一方、多くの人たちが、自宅をめざして20km以上の道程を黙々と歩いて帰宅した。家族との連絡や必要な情報をとることができず、どうしても自宅に戻らなければならなかった人も多いと聞く。

このような大地震の直後、交通機関が麻痺しただけでなく固定電話や携帯電話には、発信規制がかけられてしまい、多くの人々は家族らと直接連絡が取れなくなっていた。地震後には、NTTドコモによると通常時の約50倍のトラフィックとなり、都心部でも90%の発信規制をかけざるを得なかったと報じられている。インターネットの方は、パケット交換網という特性により、通常どおりに電子メールを使って連絡をとることができたとともに、ツイッターへのツイート経由でリアルタイムに、時々刻々変化していた公共交通機関の渋滞情報や鉄道関連の運行状況を確認することができた。

課題として、インフラ系では従来の固定や移動体通信網の東北地方の基地局が数多く破壊されてしまったとともに、発信規制によりほとんど通話機能は利用できず、地震や津波に対する脆弱性が露呈した。これまでの発信規制ではなく、通話品質を下げてでももっとスマートな輻輳制御を実施すべきであった。また、ケータイでは緊急地震速報などの誤検出に関する問題やバッテリー問題、さらには、基地局に依存しないアドホックな通信機能などへの課題も見えてきた。メディアの利用に関しては、ツイッターなどのリアルタイム性の高い新しいソーシャルメディアからの情報の有効性が確認できた一方で、従来の公共放送からの一斉同報方式による情報伝達におけるスピードの劣化や信憑性に関する課題も見えてきた。

かつて、ラインゴールド氏が2002年にスマートモブスに関する本 を書いているが、今回は、ケータイでなくツイッターのような新しいソーシャルメディアが日本に一気に普及し、クラウドソーシングの流れが加速したと考えている。投稿字数が140文字と限定されているが、それゆえ、緊急時にもスケールし、リアルタイム性を確保できるメディアとして、また公式ツイートや公式リツイートによってデマなどにも耐えうるメディアとしての特性が確認でき、一躍、災害時に役に立つメディアとしての地位を確立したといえる。

p.s.
節電プロジェクトの一環として、研究室のセンサーチームと本館棟の中央監視室の方々と協力して構築したキャンパスの電力使用量の可視化は、このような感じで仮運用しています。(正式版ももうすぐリリースされると思いますので、ぜひご活用ください)

SFCの電気使用量図

(掲載日:2011/06/20)