委員長メッセージ


大学院 政策・メディア研究科委員長 加藤 文俊

「これから」に向けて

2021年の秋から研究科委員長の役目を継続することになり、その後もCOVID-19の影響下で過ごしてきました。その間、一度も顔を合わせることができないまま、課程を修了していった学生も数多くいます。2023年度をむかえ、ようやく学生や教職員のみなさんとキャンパスで顔を合わせる機会が増えてきました。行動範囲が広がり、フィールドワークや社会実験、学会なども、ふたたび活気を取り戻しているようです。4月には学生寮「Ηヴィレッジ」が竣工し、学部生のみならず大学院生も、キャンパスに暮らしながら学んでいます。

この数年をふり返ると、窮地につねに正面から向き合い、乗り越えようとするSFCの気風も手伝って、不安を感じながらも意義深いものだったと思います。まだじゅうぶんとは言いがたいのですが、授業のみならず、さまざまな文書作成や手続きも可能なかぎりオンラインで対応できるよう調整がすすみました。国内外で開催される学会への参加、海外の大学・組織の研究者たちとの交流は、オンラインの可能性を再確認する契機になりました。

政策・メディア研究科は、創設当初から、さまざまな問題領域を横断的・複合的に扱うことを標榜しています。それは、実験的な試行を重視する態度や方法に表れています。多様なテーマに応じて、ものづくり、実験、フィールドワーク、インタビュー、さらにはワークショップや社会実践にいたるまで、現場に密着した「実学」への志向が育まれ、共有されてきました。直接体験が大切であると理解していればこそ、ここ数年の体験をふまえて、「これから」の学問のあり方について熟考し実践してゆくことが、私たちの使命だといえるでしょう。

また、これまでの慣例や制度によって惰性や弛みが生まれていたことも実感しました。長きに渡ってつくられてきた仕組みを前提に発想するのではなく、私たちの感性や想像力を活かしながら、開講形態や時間割の構成をはじめ、学位取得に向けたプロセスの見直しなどもふくめ、大学院での学び方を「全体として」再考する機会が訪れています。無自覚に「これまで」を参照することなく、つねに実験するマインドを持ちながら、「これから」の大学院、ひいては学術研究のありようについて、みなさんとともに考えていくつもりです。


2022年6月
大学院 政策・メディア研究科委員長 加藤 文俊

加藤 文俊 教授 教員プロフィール

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