教育研究の指針
3つの基軸
慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科は、1994年の開設以来、SFCの2本柱、"Interdisciplinarity:学際的研究教育(分野横断的研究教育)"と"問題発見解決型"の理念をベースに、多様な分野で世界的に高く評価される多くの研究教育の成果を示し、新たなリーダーとなる人材を育んできました。SFC全体の理念の下に、"グローバルかつ複雑な社会問題"、"広域あるいは地域的な環境問題"、"急速な技術と社会の革新"など多くの課題に対して、また、夢のある創造的社会、独創的技術の実現に向けて、優れた研究成果と新たな社会的価値を発信し、時代の変化を先導し、イノベーションを起こす人材の育成を行っています。現在、本大学院では、次の3基軸を中心に研究教育を推進しています。
- A テクノロジーと社会ルールの共進化
社会ルールが変わるとそれに合わせたテクノロジーが必要になり、テクノロジーは発展していきます。テクノロジーが発展すると、それを使ったシステムに対応する新たな社会ルールが必要になります。政策・メディア研究科は、社会システムとテクノロジーの共進化の実現を先導すべく、両者の知識と技能をベースとした研究と、それらを有する人材の育成を目指しています。 - B サイバー・フィジカルシステム
現代社会において、情報空間と物理空間を連結させたサイバー・フィジカルシステムは、自然環境、社会環境にある多くの課題においてベースとなるテクノロジーであり、両空間の連結による新しい価値を創造するシステムの構築が期待されています。政策・メディア研究科は、サイバー・フィジカルシステムを実現する最先端のデバイスや機械、ソフトウェア技術と社会ルールの設計プロセスを研究教育環境に導入し、それらの知識と技術を有する人材を育成しています。 - C 長期的・短期的環境変化の発見・分析
災害と環境、経済とファイナンスなど、どのような課題にも、短期的な問題を解決しながら、長期的な視野をもってアプローチしていく必要があります。政策・メディア研究科では、短期的な視点とともに、長期的な視点をもって、様々な自然環境、社会環境の変化に取り組む研究教育を進めていきます。
3要素のサイクル
新しく開発されたテクノロジーや社会システムが、個人や企業などによって有効に活用されるためには、それらの安全性の確保や地球環境の持続にも対応しなくてはなりません。政策・メディア研究科では、新しいテクノロジーの開発とそれに応じた社会ルールを整備し、安全であり、かつ、環境を配慮した統合的なシステムの実現に向けた研究教育を行っています。
テクノロジー、人・企業、社会ルールの3つの視点によるサイクルを対象とした研究教育により、それらのスパイラル的な進化とその先に生まれるイノベーションを目指しています。
イノベーションを起こすアカデミックプロジェクト
上記の3基軸を具体的に反映する枠組みとして、本研究科では、2017年度からアカデミックプロジェクト(AP)を設置しました。アカデミックプロジェクト(AP)は、我々が取り組むべき"イシュー(課題)"あるいは"新構想"を設定し、どのような研究教育によってその課題を対象としたイノベーションを起こすためのモデル、方法、システムの設計と、それらの実装、および、それらを学術(アカデミズム)として昇華させる方法論の実現を指向し、それらに教育研究チームとして取り組む、「未来の創造」を目指すプロジェクトです。APは、それぞれのタイトルにイシューや新構想を表すキーワードを明示しています。新たなイシューや新構想が、この先何十年も同じ内容であり続けるということは考えられません。イシューの発見・解決への視点は、社会や自然、技術の変化・変動に応じて、絶えず変化していく必要があります。アカデミックプロジェクトのタイトルや内容、その数は、時代に応じて更新されながら躍動的に動いていきます。これまで個人ベースで行われていた問題発見・解決をチームで行うこと、アカデミックプロジェクトのタイトルに何を生み出すのかが明示されていること、これらがこの取り組みの特徴です。
学術をベースとした教育研究へのアプローチではなく、アカデミックプロジェクトは、新たな"イシュー(課題)"や"新構想"を将来のイノベーションが起きるテーマとして設定し、チームによって研究教育を行っていくプロジェクトとして位置づけることができます。各APは、政策・メディア研究科におけるイノベーションを目指すチームを形成して実現され、そのチームには、複数教員と複数学生が参加し、切磋琢磨して研究教育が実施されます。APという形で研究教育チームを具体化し、産官や自治体に協力を頂きながら、新たなリーダーの育成と研究を推進する環境づくりを行っていきます。
充実したプログラム制度
今、我々が直面している、複雑な要因が絡み合った地球規模の難問に対処するためには、個別の専門的学問に加えて、これらを横断的に捉えた新しい問題解決アプローチが必要になります。横断的問題解決を実現するためには、それぞれの専門領域をベースとしつつ、分野を超えたコラボレーションが必要になります。それぞれの研究の専門性を高めるための柱として設けられているのがプログラム制度であり、学術として形成された基本的な8つの専門領域が設置されています。すべての学生はいずれかのプログラム専門領域に所属し、そのプログラム専門領域が定めるガイドラインに沿って研究を進め、修士・博士の学位取得を目指します。