MENU
Magazine

助成金を獲得してロボットの感情表現を研究

川那子 進太郎 Shintaro Kawanago
学部:総合政策学部4年
出身校:ACS Hillingdon International School(英国)

ロボットは子供の頃から好きでした。最初の出会いといえばドラえもんですが、近年になってどんどん世の中にロボットが登場してきた事実に触発されて研究を始めました。コミュニケーションロボットの社会進出が進む中で、個々のロボットに独自の個性が無いことに疑問を抱き、ロボットの性格や人格について研究しようと思いました。
現在の研究テーマは「ユーザとの長期的インタラクションによるコミュニケーションロボットの性格形成手法」。ヒューマノイド型ロボットの精密さを追求した研究です。人間とロボットが、自然に楽しくコミュニケーションできるようにしたいという考えが出発点になっています。
教育心理学や対人心理学の考え方を用いて、ユーザとの関わりの中で緩やかに性格が変わっていくロボットシステムを開発しています。ロボットはユーザから受けた応答を記憶し、その履歴から感情の持ち方を変えていきます。ユーザがロボットの反応を何度も見ているうちに、ロボットの性格が自然と理解でき、他のロボットとの違いに気付くことを目指しています。このシステムによってロボットに愛着がわき、ロボットとのインタラクションをもっと自然な楽しいものにすることがゴールです。
ロボットの感情モデルには人間の心理モデルを採用するほか、対人心理学のデータを用いてロボットの感情変化を調整します。評価実験では既存システムとの比較をおこないますが、人がロボットの性格をどう認識しているのかという点にも注目し、研究成果をロボット関連の学会で発表したいと考えています。

山岸学生プロジェクトで研究がパワーアップ

山岸学生プロジェクト支援制度からの助成金のおかげで、実験やデモの質が上がりました。必要となるデバイスを購入することができ、このデバイスをユーザに貸し出しすることで思い通りの研究ができました。学会発表で様々な意見がもらえたのも助成金のおかげ。さまざまな制約がなくなって、自由に研究を進められた実感があります。
山岸学生プロジェクトへの応募には、自分の研究によって実現したい明確なビジョンを持ち、それをどう実現するのかわかりやすく説明する必要があります。意外性や新奇性より、研究がどれだけ世の中の役に立つのかが重要視されます。社会の中で目標を実現していく道筋もきちんと説明できないといけません。
助成金を獲得すると、研究内容を学会で発表したり、プログラムを実装した製品を公開したりといった成果公表の義務もあります。SFCの場合は、年に一度のOpen Research Forum(ORF)が格好の機会。産業界にも注目されているビッグイベントです。
自分の研究を進める中で、たくさんのフィードバックをいただき、新しい課題も見つかってきました。企業からの熱い視線も感じています。研究内容としてはまだまだ初期段階ですが、全力を出し切れている実感はあります。
ロボットではまだ数種類の感情を扱っているだけなので、やるべきことはたくさん残されています。モーションのプログラムを増やしてより自然な感情表現を可能にしたり、感情表現の度合いをパラメーター調整などで微細に表現したり、擬似的な心を自然に表現する方法についても研究を続けていきます。