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キャンパスライフ

生命現象をシステムとして理解する

生命現象をシステムとして理解する

岡本 理沙 Lisa Okamoto
学部:環境情報学部3年
出身校:実践女子学園高等学校(東京都)

SFCの多様性の中で学びたい

私は幼少の頃から高校まで、インターナショナルスクールや海外の現地校、日本の公立校や私立校といったさまざまな教育環境を経験しました。その中で多様性を大事にしたいという価値観を持つようになったことが、SFCへの進学につながりました。SFCは、学生の国籍やバックグラウンド、学問領域など非常に多様性があるキャンパスです。私はそのような自分にとって居心地のよい環境の中で、興味のある学びに取り組んでみたいと考えました。
入学してからは、もともと持っていた生物やITへの興味からバイオに行き着き、環境情報学部教授の冨田勝先生が所長の先端生命科学研究会(先端生命研)に所属しました。そこで出会ったのが、「トランスオミクス」という学問です。バイオとITの融合がすごくSFCらしいと思いました。

「トランスオミクス」によるチャレンジ

 「トランスオミクス」は、ひとことで言うと、生命現象をシステムとして理解することを目指す学問です。細胞の分子を網羅的に測定し、数理的・統計的手法を用いることで分子間の因果関係を明らかにします。その結果、生命現象の背後にあるシステムを、パソコン上でマップのように視覚化することができます。この手法は様々な疾患のメカニズム解明や創薬などに応用が期待されています。たとえば、病気の方の現象を健常者のものと比較すると、代謝が途切れている部分や組み変わっている部分がわかります。そこから、どの物質が原因でそのような現象が引き起こされているのか、ひいては、どのように病気が発症するのか、というところまで遡って解明できるのではないかと考えられているのです。
私は、「トランスオミクス解析を利用した精神・神経疾患のメカニズム解明」をテーマに研究を進めています。そのテーマを設定したのは、従来の研究では、例えば統合失調症に代表される精神疾患の全貌を明らかにするには限界があると思ったからです。精神疾患の多くは遺伝要因と環境要因の両方が複雑に関係して発症すると考えられており、「トランスオミクス」の手法を用いることで疾患のメカニズム解明につながる発見ができるのではないかと考えました。

研究の拠点は理化学研究所

私は理化学研究所(理研)の研修生として、理研を拠点に研究を行っています。先端生命研が理研とつながりを持っていたことがきっかけで、慶應義塾と理研の両方から承認をいただき、このような体制をとることができました。SFC全体を見渡しても、大学の外部で活動して、それを研究テーマや卒業論文のテーマにされている方はたくさんいらっしゃいます。学外での研究成果が大学での学びとして認められることは、SFCならではの特長の一つだと思います。
研究は現在、データベースに関する知識やプログラミング技術を習得して「トランスオミクス」の手法を磨くとともに、先行研究を元に今後の研究に関して検討を重ねている段階です。今後は自分でも実験を行い、その成果を集大成として卒業論文にまとめ上げたいと思っています。

先端技術と社会の架け橋に

将来は、ヘルスケアに寄与できる仕事に就きたいと思っています。ヘルスケア関連のサービスを提供する企業への就職も選択肢の一つ。起業して「トランスオミクス」のような技術をスムーズに活用できる仕組みを作り、最新の研究とそれを必要とする人をつなぐことにも興味があります。まだ具体的には決めていませんが、先端技術と社会の架け橋になれるような仕事を目指していきたいです。
そのためには、技術を広めていく、商品の良さをアピールして販売に結びつけていく、ビジネスの知識も重要になると思っています。ビジネス関連の授業を履修した経験もあるのですが、あらためて学ぶのであれば、MBAの取得も視野に入れて本格的に取り組める大学院への進学も検討したいと思います。

自分の興味を突きつめられる場所

SFCは、勉強に限らず、"これが好き、これが得意"というものがある人にとても向いているキャンパスです。誰でも、何か一つは興味があるものを持っているのではないでしょうか。それを突きつめたい、究めたいと考えている人にとって、存分に楽しめる場所だと思います。
また、私にとって、自分と異なる分野に取り組んでいる友人を増やせたこともよかったです。デザインや音楽、先端技術など、自分の知らないこと、新しいことを吸収したいという意欲、一生学び続けたいという気持ちも育まれました。そういう感覚は、多様性に満ちたSFCで築いた人脈のおかげで身についたのだと思います。