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迷いながら道を見出す、本物の学びの宝庫

須佐 和希 Kazuki Susa
学部:環境情報学部4年
出身校:黒磯高等学校(栃木県)

SFCとの出会いは、受験生時代に目にした過去問です。環境情報学部の入試問題で、「自分がつくりたい製品をスケッチして、機能を説明せよ」という出題がありました。この設問に刺激を受けて「プロダクトデザインってなんだろう?」と関連書籍を読み漁り、特に感銘を受けたデザイナーの坂井直樹さんと山中俊治さんが当時SFCで教えていることを知りました。
デザインといっても、単なる意匠ではなく商品設計に関心がありました。1年次の春から自分にあった研究会を探し、最初に入ったのは中西泰人研究会。インタラクションデザインを制作する研究会でしたが、当時の自分のスキルでは何も満足につくれず一度はデザインに挫折しました。
次に入った桑原武夫研究会では、インターネットマーケティングを実践しました。不用品を回収してオンラインフリマアプリで売買する事業を始め、1ヶ月で20万円の利益を計上。でも仕入れた古着で部屋が埋まり、朝から晩まで服の補修、洗濯、出品、配送作業に追われて継続を断念しました。それでも事業で必要となったチラシ、ロゴ、ウェブなどのデザインだけは楽しく、あらためてデザインの道を模索しました。
学部2年の夏から、UIデザインの会社で1年間インターンのデザイナーとして働きました。その経験から、クライアントの要望を無批判に実現させるのではなく、クライアントと一緒に議論できる環境でものづくりがしたいと思うようになりました。どうやったらクリエイティブな仕事ができるのだろう? そんな悩みを抱えているとき、「あなたは何をデザインしますか?」というメッセージに共感して、水野大二郎研究会に入りました。
卒業研究として取り組んだのは「契約のデザイン」です。企業がユーザーの個人情報を簡単に取得できる時代になりましたが、個人情報の取扱ルールを理解させるインターフェイスはわかりにくく、もっぱら法律家が法律家のために作る裁判用の文書に留まっています。この現状に疑問を持ち、弁護士や法律の専門家にアドバイスをいただきながら研究を進めることができました。

自発的な問いが、新たな問いを生み出す場所

デザインは美大でも学べますが、SFCは「何を作るのか」を考える場所として格好の環境です。デザインとは、単純にモノをつくるスキルのことだけではありません。ヴィクター・パパネックが著しているとおり、デザイナーには人類にとってよりよい環境を作る責任があるからです。
これを本当につくっていいのか? 誰かの役に立つのか? 役に立っているとしても倫理的に正しいのか? そんな問いの答えは、デザインの外部から得られることがあります。
例えば、小熊英二先生の社会学や堀茂樹先生の哲学が、そのような問いに重要なヒントを示してくれるのはSFCの強み。知的財産などの知識を獲得したいときには、すぐに法学の授業も受けられます。自分の能力不足を実感した1年の秋に、そのようなデザインの領域外の講義を集中的に選択したことが大きな糧となりました。
SFCに来るのは、おそらく8割ぐらいが「迷っている人」。やりたいことはあるが、ひとつの分野では満足できないから、別のことも学んでみたいというタイプです。ここでは幅広い学問のプラットフォームが、ひとつのキャンパスに混在しています。多様な分野を行き来しながら内省して、自分のやりたいことが確認できる場所がSFC。やりたいことが多いほど、さまざまな知識を得られる環境がここにあります。
学問には「巨人の肩に乗る」という例えがありますが、SFCの研究は巨人と共に闘っているようなイメージ。先生はわかりやすい解答を教えてくれませんが、簡単には解けない問いの合間にさまざまな行動が求められ、自分が動くことでまた新しい問いが生まれます。
入学したら、1年次から研究会に入ってみてください。そこで挫折が待っていたとしても、SFCでは自由にやり直しができます。一度倒れても、立ち上がるプロセスから大きな学びが得られるでしょう。