一ノ瀬友博 研究会での取り組み
"自然環境"に対するアプローチ
一ノ瀬友博研究会では二つのプロジェクトに分かれ、SFCのサステナビリティ向上に向けて多方面から研究に取り組んでいます
SFCをフィールドに、生物多様性を調査しているSatoFCプロジェクト (※1)、バイオマスの有効利用方法を調査しているバイオマスプロジェクトの2つのプロジェクトが稼働しています。
(※1) 旧 看護ビオトーププロジェクト
SatoFCプロジェクト
本プロジェクトは、看護医療学部棟裏のビオトープ管理を引き継ぐ形で2015年に始まりました。2022年からSFC全体の生物多様性の調査を始めたことで、現行のプロジェクト名になりました。植物、水生生物、昆虫、鳥類、哺乳類の生物調査に加えて、ドローンや3Dスキャナを用いたリモートセンシングによる環境評価を行っています。ビオトープの管理作業では、主にセイタカアワダチソウとオオブタクサを対象に外来種駆除を行なっています。特にオオブタクサは2022年時点で管理作業開始前の10分の1以下まで数を減らしました。これらの活動を通じ、地域の生物多様性向上に貢献することを目指しています。
バイオマスプロジェクト
本プロジェクトは、SFC内で発生するバイオマス資源を有効活用することを目的にして2023年から始まりました。活動の内容は主に、木炭やコンポスト等の作成・開発を行なっています。二酸化炭素の排出を吸収・固定しつつ、キャンパス周辺地域の資源循環とキャンパス内の生態系管理・処理費用削減の両立を目指します。
SFCでこれまで確認された生物種は572種にのぼり、希少な動植物(※1)が71種、指標種 (※2)が53種に及ぶ
SatoFCプロジェクトは2015年から活動を継続しています。これまでの調査で、SFC内の自然環境は藤沢市内でも有数の生物相豊かな環境であることが判明しています。全体の確認種数は去年度から98種増加し、特に昆虫は新たに70種確認しました。昆虫調査では、今年度よりライトトラップ調査や越冬調査を取り入れ、種数の増加に繋がりました
(※1)環境省レッドリスト、神奈川県レッドリスト指定種
(※2) 藤沢市実態調査で指標種・重要種に選定されている種(緑地における豊かさから、保全すべき環境に依存して生育・生息する種を指す)

環境リモートセンシングによるSFCの森林構造の評価、炭素固定量推定の取り組みを行っています

SatoFCプロジェクトはドローンや3Dスキャナを導入し、生物多様性調査の簡易化や広範囲の森林構造データを取得しています。これによりSFCの森林における炭素固定機能の定量化を可能とします。さらに生物種のデータと組み合わせ、ハビタットマップや植生図の作成を目指します。
2023年度よりSFCで発生するバイオマス資源の有効利用に向けた 取り組みを行なっています

バイオマスプロジェクトは2023年より活動が始まりました。これまでの調査で、SFCでは年間約270tのバイオマス資源が未活用の状態であることが明らかになっており、バイオマス資源の有効活用に向け木炭やコンポストの作成・開発に取り組んでいます。

SFCは神奈川県内の私立大学および藤沢市では初めて、環境省から自然共生サイトに認定されました


環境省の自然共生サイト認定制度(※1)は2023年度から始まりました。本制度は、民間の取組により維持される緑地で、生物多様性の価値を有する区域が認定されます。SFCは本地域の典型的な生態系や希少な生物が保全されていることなどが評価されました。
(※1)令和7年2月環境省自然環境局、「自然共生サイト」の概要
認定区域について
当サイトは、施設(灰色)を除く約20haの敷地(青枠)が認定され、その内約13haが樹林環境となっています。当サイトは、生物多様性が高いエリアの遠藤笹窪谷に隣接し、エコロジカルネットワークの一角に位置します。
高く評価された生物多様性の価値
価値(3)里山環境の生態系
ノウサギやホオジロなど里山に生息・生育する動植物、スライド8ページで示した藤沢市の環境指標種を複数確認しています。
価値(4)生態系サービスの享受
貯水池は雨水調整、樹林地は暑熱緩和や炭素固定機能を提供します。豊富なバイオマス資源を用いて、スライド10ページで示した木炭やコンポストに利活用しています。
価値(6)希少種の生育環境
常緑広葉樹の造成林、落葉広葉樹の二次林、湿地性ビオトープなどの水辺環境、ススキなどの草地環境を有します。これらの環境が混在して維持されることで、スライド8ページで示すような希少種が70種以上確認されています。