音のない世界におけるデザインをオープンソース化することで、
互いの距離を近くしたい
和田 夏実 Natsumi Wada
学部:環境情報学部4年
出身校:長野高等学校(長野県)
私は両親が聴覚障がい者であったことから、音のない世界と音のある世界の間で育ってきました。こうした自分の成育環境、さらには大学入学後、国内20 校、国外10 校のろう学校をフィールドワークのため巡った結果、障害学の基本である「障害の社会モデル」に基づいて環境を変える必要性と、その難しさを感じました。そこで「障害の社会モデルを達成するために、音のある世界と音のない世界をつなぐものづくりのあり方の設計」を自分の卒業プロジェクトのテーマとしました。本プロジェクトでは、センサーやLED を差し込むだけで、簡単に入力と出力を組み替えられる電子工作キットを製作。それを素材に聴覚障がい者向けにワークショップを行い、そこで出されたアイデアやニーズに基づいた支援ツールの作り方をオープンソースとしてweb 上で公開します。これにより、聴覚障がい者の生活の質の向上を図るだけでなく、健常者からは見えず分かりづらい聴覚障害について、理解を広げるプラットフォームを作ることができるのではないかと考えます。
ろう学校での教育へのに導入など、
聴覚障がい者が自ら社会モデルを構築できるように
本プロジェクトのために製作した電子工作キットは、入力側を心拍センサーや音センサーとし、出力はLEDによる光や振動モーターで構成されます。これらは自由に、そして簡単に組み合わせることができ、一人ひとりの多様なニーズが見えるようになります。たとえばワークショップでは、音センサーとLEDライトを1つの小さなモジュールとして複数の人に装着したいというニーズが出されました。これは会議などの際、今誰が喋っているのかが分からないと、口の動きが読めないという要望から出されたものです。
本プロジェクトのワークショップでは、コミュニケーションの中での互いの「気づき」を補完することへのニーズが多かったのが特徴的でした。こうしたニーズに基づいて、それを補完するツールを、ろう者自身が作っていくということもプロジェクトの重要な側面です。最終的には、これらの電子工作キットや教材などをより簡便なものとして、ろう学校での教育に導入するなど、 ろう児 自身が自分の力で社会モデルを構築できるようにしていくことができればと考えています。