「いい感じだな」と思われるアイヌを届けたい
関根 摩耶 Maya Sekine
学部:総合政策学部1年
出身校:札幌第一高等学校(北海道)
個性と面白さにあふれた仲間たち
私は、アイヌ語やアイヌ文化が当たり前に存在する地域で生まれ育ちました。でも自我が芽生え、アイヌがマイノリティの民族で差別される対象にもなり得ることを知って、アイヌであることを隠すようになってしまいました。家族や地元の人たちが大事にしてきたものを拒絶してしまう...。そんな違和感が、「自分たちの歴史や文化に胸を張れないのはおかしいのではないか」という問題意識に変わって、大学への進学を考えるようになりました。大学では何か特技を見つけて、「すごいね」と認めてもらえるような活動を目指してみよう。そうすれば「アイヌの関根摩耶」ではなくて、後から「関根摩耶ってアイヌの人なんだ」という認識がついてくる形が作れるのではないかという期待がありました。
SFCを選んだのは、さまざまなバックグラウンドを持った、個性豊かで面白い人がたくさんいると感じたからです。何かを始めるときに、一人の力では大きなことはできません。私は人とすぐに仲良くなれて、小さい頃から「輪を作ることができるね」と言われていたので、そういう強みを活かしてSFCでたくさんの人脈を築きたいと思いました。もう一つのきっかけは、アイヌの言語や文化をテーマにした藤田護研究会の方々が、合宿で私の地元に来てくれて、話をする機会がたくさんあったことです。SFCならではの海外経験がある方だったり、自分の中でやり遂げたい問題意識がある方だったり、興味深いことをいろいろとお聞きすることができました。
地元で活動できるのはSFCだからこそ
入学してすぐに、藤田研究会に所属しました。1年の時から先輩方と関われて、いつも新しい視点に気づかされています。調査対象である地域の人間がいるということで、メンバーも私から学べることがあるでしょうし、私もアイヌというものを主観ではなく客観的に捉えることができます。今は、月に何回か北海道の地元に帰って、アイヌの人たちが小さい頃にやっていたことや、日常生活で使われていた言葉を書き残したり、アイヌの人たちの家系図を作ったりという活動をしています。20年後30年後には、残っているアイヌの情報が重要な役割を担うと思っているからです。一方で、地元のラジオ局でのアイヌ語講座の講師など、個人的な活動も行っています。このような活動ができているのは、自分で時間割を組んで日程調整ができる、SFCのカリキュラムのおかげだと思っています。
アイヌの教材や商品を作りたい
地元での活動とは別に、アクションを起こしたいこともあります。一つは、今はほとんどないアイヌの教材を作ること。私が吹き込んだ言語や文化の教材を、ネットにアップするといった方法を考えています。もう一つは、若者が気軽に手に取れるアイヌの伝統を活かした商品を作ること。今の若い人たちは、アイヌ文化などの異文化にもフラットに入っていける世代だと感じているので、そういうマインドをうまくつかみたいです。例えば、とてもきれいな形をしていて、しかも意味を持っているアイヌ文様を入れたTシャツを作る。それをオシャレだなと感じてもらって、その後で「これはアイヌ文様なんだ、意味もあるんだ」と気づいてもらえるような心の動きを作りたいと思っています。
海外でブームにして、逆輸入のように日本に入ってくるように、という形もあるかもしれません。そういう意味では、海外の方々がたくさんいらっしゃる東京オリンピックは絶好のチャンスです。そこまでに何かアクションを起こして、それをどこまで持続できるかというところが大事になってくると思っています。
大切にしたいものを一つ持ってSFCへ
SFCには「これを学びなさい」という必修がありません。受けたい授業を自分で選ぶので、選んだことに責任を持つようになって、勉強は人生の糧になる武器だということを理解できるようになりました。上京してよかったのは、視野がすごく広がったことです。外からの視点で、北海道のいいところに気づくこともできました。
アイヌであるということは、私を強くしてくれます。「いい感じだな」「楽しそうだな」と思われる人でいたい、そういうアイヌ像を届けたい、という願いを支えてくれるというか。SFCに来て、いろんな思いを胸に、それを叶えようとがんばっている仲間たちにも影響を受けています。みなさんもSFCに来るなら、自分が大切にしたいものを一つギュッと持っているといいと思います。上京する人であれば、地元が抱えている問題でもいいですし。アプローチする方法は、きっと見つかります。そして、地元を大切にする。地元があってこその自分だという気持ちを持っていれば、個性を活かしながら、たくさんの友人ができるのではないかと思います。