投票率や世論調査をキーワードにフランス大統領選挙をひも解き、政治意識の高さを探る
市川 勘太郎 Kantaro Ichikawa
学部:総合政策学部4年
出身校:成城学園高等学校(東京都)
直近の日本の国政選挙であった2014年12月の第47回衆院選挙では、投票率が戦後最低の52.66%でした。当時、フランスへ交換留学をしていた私は、この戦後最低という投票率の低さに衝撃を受けました。一方でフランスは、大統領に大きな権限がありながらも、議院内閣制の枠組みを取っている「半大統領制」という制度の元、たとえば2012年の大統領選挙の投票率が80%を超えるなど、国民が高い政治意識を持っています。
こうした事から私は、「フランス大統領選挙の制度的な考察・国民の政治意識を世論調査や投票率を参考にしながら」というテーマに取り組んでいます。この研究では、世論調査を活用しながら、フランス国民の政治意識を解き明かしていきます。具体的には、フランス屈指の教育機関であるパリ政治学院、あるいは代表的なクオリティペーパーである『ルモンド』の世論調査など、複数の世論調査を統計的に比較。あるいは、個別の世論調査そのものに注目し、そこにこれまでにない新規性のある解釈を加えていくなどして、フランスにおける選挙制度のダイナミズムを解明できればと思います。
フランス国民の政治意識を高めている可能性のある2回投票制にも着目する
フランスの大統領選挙制度の中で、特に私が興味深いと思うのが、2回投票制というものです。これは、1回目の投票で過半数を獲得する人がいなかった場合、もう1度、上位2人による決戦投票が行われるという制度です。仮に自分が投票した人が1回目の投票で落選しても、有権者はもう一度、決選投票に参加できます。このため国民ひとり一人が、「自分が大統領を選んでいる」という意識を強く持つことができ、ひいてはフランスの高い投票率に象徴される、政治意識の高さにつながっているのではないかと推測しています。
世論調査や投票率をキーワードにした研究は、SFCの曽根泰教研究室に所属し、政治学を学ぶ傍ら討論型世論調査(DP)の設計運営に参加したことが大きいと考えています。DPは、スタンフォード大学のフィシュキン(James S. Fishkin)教授とテキサス大学のラスキン(Robert C. Luskin)准教授が考案したもので、情報提供と熟議を踏まえた上で、市民の意見がどのように意見が変容するのかを見る新しい形の世論調査です。