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3Dプリンター×自動運転車=変形する外装

江口 壮哉 Soya Eguchi
学部:総合政策学部3年
出身校:東京工業大学附属高等学校(東京都)

高盛 竜馬 Ryoma Takamori
学部:総合政策学部3年
出身校:國學院高等学校(東京都)

 

「ハードの江口」と「ソフトの高盛」

江口 研究のテーマは、「複合素材3Dプリントを用いた、自動運転車の"変形する外装"」です。研究を始めるきっかけは2つあって、まず私たちが所属している田中浩也研究会に大型の3Dプリンターが導入されたこと。そして、自動運転を研究している大前学研究会の大前先生が、小型EV車を貸してくださったことです。自動車の外装を3Dプリンターで作る研究はあるのですが、自動運転車ではあまりありません。自動運転という制約が付いたときに、3Dプリンターで実現できる可能性を実寸の車で突きつめていこうと考えました。
高盛 まず大前先生に、自動運転車の外装についてヒアリングを行いました。「自動運転車を実際に走らせたときに、住民からネガティブな意見が出る。例えば、怖いとか、危ないとか...。そういった課題を外装から解決することはできないか」というお話しを伺って、「いかに社会と適合していくか」ということも大きなテーマになりました。
江口 2人の役割分担は、ひとことで言えばハードウェア面とソフトウェア面です。それぞれの得意分野を活かして、変形する外装となる膜の仕組みを私が考えて、特定形状に変形する膜のパターンを高盛が考えます。それを実際に3D出力して検討するというトライ&エラーを繰り返しました。

「壊れる外装」から「変形する外装」へ

高盛 個人的には、自動車がもっと生物っぽくなったらどうだろうという漠然としたイメージがありました。なるべく柔らかいフォルムにすれば、親しみを感じられるのではないかと思ったのです。
江口 そこから「変形する外装」というコンセプトになっていたのですが、最初に目指していたのは「壊れる外装」です。壊れ方を3Dプリンターで制御して、任意の壊れ方をする外装を追究していました。しかし、"壊れる"というのは走行中にはわかりません。一方、"柔らかい"というのは見た目で感じることができます。万一ぶつかっても安心という印象を与えられるので、"柔らかい"を追究して「変形する外装」に行き着きました。採用した"柔らかい"特殊素材は、田中研究会でしかプリントできない素材です。
高盛 パターンは、3D形状を2Dに展開する技術から生まれるオーセティックパターンをもとに作っています。田中研究会でしか使用できない素材と、新しい技術を活かしたパターンを掛け合わせれば、今までにない外装が作れるのではないかという方向で研究を進めていきました。
江口 完成した外装は、人間工学の国際学会に提出しています。それが発表されることも決まっているので、そこでフィードバックを得ながらさらに詰めていこうと考えています。

「3Dプリント」に「エンターテインメント」を

江口 今後デジタルファブリケーションを日常の中に広めていくためには、エンターテインメント性が大切なテーマの一つになると思っています。3Dプリントは「3Dで出力される」だけでも面白いです。ユニークな形状が生まれます。そういう楽しさをわかりやすく打ち出していければ、もっと多くの人の心を動かせるような気がします。
高盛 私は、カラー3Dプリンターに注目しています。今までなかったような色彩表現や、3Dオブジェクトとの融合の表現を生み出せるのではないかと考えて、新たな研究として取り組んでいます。
江口 自動運転車の外装で考えていたのも、機能性だけではありませんでした。街でこの外装を目にした人がどんな印象を持つか、未来を描いてもらえるか、というような視点がありました。
高盛 今、身の回りのもの、例えば机や椅子にもシンプルなデザインが多いと思います。私は、自動運転車の外装に生物っぽさをイメージしたように、ジェネレーティブという生命感のあるデザインが好きです。そのようなデジタルファブリケーションだからこそ生み出せる形状を持った、机や椅子のある未来は楽しいだろうなと想像したりします。

「チャンス」を活かす「チャレンジ」

高盛 私はSFCに入学する前から、やることを決めていたわけではありません。興味を持った研究会に入って、新たな興味が生まれると次に移って...という活動を続けながら田中研究会にたどり着きました。1年のときから教員と深く関われる複数の研究会に所属して、教員のさまざまな考えに触れられたことは、SFCでなければ積めない経験だったのではないかと思っています。
江口 私は高校時代に、デジタルファブリケーション界でも有名な先生の授業を受けたことがきっかけで、入学前から3Dプリンターに興味を持っていました。しかしそれだけではなく、自分が学びたいと思えば、専攻以外の科目を自由に幅広く学べることもSFCを志望した理由の一つです。
高盛 研究会に入る前に、3Dプリンターやレーザーカッターを使えるファブスペースという施設も用意されています。これをやってみようと思ったときに、それをやるチャンスがあること。そして、やっぱりこっちへ行こうと思ったときに、スムーズに方向転換できるところがSFCの良さではないでしょうか。
江口 そういうチャンスを活かすために大切なのは、自分から動くこと。積極性やチャレンジ精神がある人ほど、SFCに向いているのではないかと思います。

田中浩也研究会
大前学研究会