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2022.12.06

「大学職員」ってなんだろう?|湘南藤沢キャンパス事務長 中峯秀之

2022年41日に12代目の湘南藤沢キャンパス事務長として就任しました中峯です。就任後、はや9ヶ月という時間が経過し、暑い夏を経て、キャンパスが一年で一番美しく映える紅葉の季節もまもなく終わりを迎えようとしています。時が経つのも早いものだと実感する毎日です。そんな私がこのキャンパスで働くのは実は二回目のことになります。前回は20116月から201510月までの45ヶ月を学事担当課長として務めさせていただきました。その際には、総合政策学部と環境情報学部に現在在学する皆さん全員に適用されている「14学則」の策定に携わらせていただきました。また、今から20年近く前のことになりますが、当時信濃町キャンパスに勤務していた私は、20043月に卒業された看護医療学部一期生の皆さんを大学病院看護部に受け入れるための採用業務に従事し、現在に至る流れの整備に尽力いたしました。現在も看護医療学部の学生さんの最大の就職先は慶應義塾大学病院です。そういう意味でも私は三つの学部の学生さんと密接な関係性をもってキャンパス事務長という今の立場で、キャンパスで働く「職員」を統括させていただく立場にあります。そこで、今回の「おかしら日記」は、かつて学事担当課長だった時代の体験談なども交え、『「大学職員」ってなんだろう?』というタイトルで、私もその一人でもある「大学職員」という働き方にフォーカスして書かせていただきたいと思います。少し長くなりますがよろしくお願いいたします。

さて、慶應義塾には大きく分けると、「教員」と呼ばれる人たちと、「職員」と呼ばれる人たちがそれぞれ働いています。一般社会の方が大学という組織を見る時に真っ先に思い浮かぶのは、教授、准教授といった職名で教室で教鞭をとられている「教員」のことではないかと思います。昨今の緊迫する国際情勢の中では、湘南藤沢キャンパスに在籍する複数の「教員」がニュース報道等で解説をされているのもお見かけします。大学という場で働いている方を想像する時、「教員」という存在はやはりとても大きいように思います。しかし、その一方で、大学には私同様に「職員」という立場の人たちも数多く働いています。分かりやすいのは看護医療学部の学生さんたちが目指されている看護師・助産師という「職員」としての働き方ですが、それ以外にも数多くの「職員」が働いています。では、その他の「職員」とは何をする人たちなのでしょうか?「教員」の仕事の補助業務をしている人たちなのでしょうか?

「職員」とは何をする人たちなのか?という質問への答えとして、ここにとても分かりやすいWebサイトがありますのでご紹介させていただきます。「慶應義塾職員採用情報」というWebサイトになります。

◆慶應義塾職員採用情報

ここには、「Features 職員インタビュー」というコーナーに慶應義塾のさまざまな部門で働く「職員」が実名かつ写真入りで登場し、それぞれの仕事内容について分かりやすく説明をしてくださっています。読みものとしても非常に面白い仕上がりになっていますので是非ご覧いただきたいと思います。ちなみに、看護医療学部の皆さんは以下のサイトをご覧ください。こちらも力の入った作りのサイトになっています。

◆慶應義塾大学病院 看護部

そして、上記で触れた「慶應義塾職員採用情報」のWebサイトの中で、神谷絵理奈さんという方が「仕事と育児を両立させて働く」というタイトルでインタビューを受けられています。この神谷さんは、私が湘南藤沢キャンパス学事担当課長だった時代の部下として一緒に働いてくださった方です。慶應義塾大学法学部を卒業し、新卒採用として「職員」になって初めて働いた先、彼女にとってはそれが湘南藤沢キャンパスの学事担当だったのです。では、そんな学事担当の「職員」の仕事を見てみたいと思います。

この「おかしら日記」はどういった方が読まれているのでしょうか?残念ながらそれを細かく調査した統計はありませんので実際のところはわかりませんが、湘南藤沢キャンパスに学ぶ現役の学生さんたちが読まれているとしたら、是非お伝えしておきたいことがあります。湘南藤沢キャンパスにある三つの学部のうち総合政策学部と環境情報学部の皆さんが学んでいるカリキュラムは「14学則」と呼ばれているもので2014年度からスタートしたものです。当時、学事担当課長だった私は、新しいカリキュラムをゼロから作り、スタートさせることがミッションの一つでもありました。20116月の着任早々、当時の総合政策学部・國領二郎学部長、環境情報学部・村井純学部長からその取りまとめの依頼を受けた私は、「次世代カリキュラム検討ワーキンググループ」を組織、リーダーとして現・政策・メディア研究科の加藤文俊委員長をお迎えし、以降、2年という長期に渡り40数回のカリキュラム検討に向けた会議を行いました。短くても半日、長い時には丸一日を会議室に籠って、さまざまな議論を繰り返しました。それは、当時の学生さんたちに適用されていた「07学則」の問題点の分析からスタートし、その問題点の解決に向けてさまざまな検討を行い、その一方で、あたらしいカリキュラムにどのような内容を盛り込んでいくかということについてアイデアを出し合い、合意点を目指して議論を尽くしていきました。私は他の学部の学事担当としての勤務経験もありますが、湘南藤沢キャンパスの特徴として「教員」と「職員」がより密接にさまざまな事ごとに協同していくということがあります。このあたらしいカリキュラム策定への議論の過程では、「教員」と「職員」が緊密な協同作業のもとに一連の作業を進めました。「教員」は担当している授業を開講し、また研究会等での繋がりから学生さんの声を直接聞くことができます。一方、「職員」は、キャンパス全体を見渡して、履修、成績等さまざまなデータを元に学生さんの動きをトータルに分析することができます。これらそれぞれの長所を生かすことで、総合政策学部と環境情報学部という、これら二つの学部に集う学生さんにどういった学びを提供するべきなのかということを第一に考え、その時点で考えられる最善の内容を「14学則」には落とし込めたと思っています。具体的なことで一つお話させていただきたいと思います。以下は、「14学則」の考え方をまとめたWebサイトになります。

総合政策学部・環境情報学部 カリキュラムサイト

ここに、カリキュラムの特徴として掲載されている事項の最初に「クラスを中心とした仲間づくりや可能性の発見・再発見の機会」という項目があります。総合政策学部と環境情報学部では、あたらしく入学してきた学生さん全員について、その学期の最初に各クラス2名のクラス担任の下で、クラスガイダンスが行われ、大学の中で「クラス」という居場所が用意される仕組みになっています。この考え方は、「職員」側から提案し実現したものです。その起点は、当時あたらしく入学してきた学生さんたちの中に、大学という環境に馴染めず、休学、そして退学へと至ってしまう方が毎学期一定数いることを学事の現場で深刻に捉えていたからです。学生さんにはさまざまな方がいます。自分から積極的にサークル活動や研究会活動に参画していく方がいる一方で、自分の居場所をなかなか見つけられずに、戸惑いの中に進むべき道を見失ってしまう方もいるのです。そこで考えたのが、自ら動かなくても自動的に組織される「クラス」という居場所をまず用意して、そこを最初のステップにしてもらおうという考え方です。そのために同じ「クラス」の仲間と一定数の授業をともに受けられるように一年目の時間割には工夫を入れています。これは、まさしくキャンパス全体を俯瞰して学生さんの動きを考えられる「職員」だからこそできた提案だと思っています。そして、上記させていただいた神谷さんにも20126月の学事担当着任直後からカリキュラムの策定に携わっていただきました。直近で大学で学ぶ側にいたリアルな体験を上手く活かしていただけたと思っています。このようにあたらしいカリキュラムを一つスタートさせるにあたっても「教員」と「職員」にはそれぞれの役割があり、その協同の成果でできあがったのが「14学則」なのです。また、学事担当は、学生の皆さんが大学生活において、まずなすべき「履修申告」、その先に来る「定期試験」、そして「成績」という一連の学びの流れ全てにおいて密接に関わりをもっていきます。「教員」はそれぞれ担当する個々の授業において、授業を運営し、成績をつけるという一連の学びの流れを担当しますが、それら授業の全てを統括、俯瞰して「教員」と学生さんとを繋いでいく立場に立つ存在、それが「職員」なのです。

以上、学事担当職員の業務の一旦をご紹介しました。しかし、学事担当職員は慶應義塾の「職員」のごく一部にすぎません。では、慶應義塾には何名位の「職員」が働いているのでしょうか?こちらについては、慶應義塾のWebサイトに「情報公開」としてその人数が公開されています。教職員それぞれの人数は「教員2,784名、職員3,252名(202251日現在)」という値になっており、「職員」の方が数としては多いことがわかります。中でも信濃町の「職員」が多いことがわかりますが、このうちのおよそ半数は看護師または助産師として働かれている方たち、看護医療学部の学生さんの先輩方にもなります。また、「教員」は男性比率が高いのに比して、「職員」は女性が男性の3倍以上の割合を占めているのも特徴の一つです。

◆慶應義塾 情報公開 教職員情報

慶應義塾には数多くの「職員」が6つのキャンパスそれぞれにおいて勤務していることがお分かりいただけたかと思います。そして、この「情報公開」のWebサイトを管理するのも「職員」の仕事です。また、ここにある教職員数の数値を出すのも「職員」の仕事です。具体的には、この数値は三田キャンパスの塾監局という建物に事務室を構える人事部が算出しているものです。人事部は慶應義塾全体の人事に関する業務を行っている部門ですが、201510月まで湘南藤沢キャンパス学事担当課長をしていた私は、その翌月からこの人事部の課長となりました。人事に関する業務も多岐にわたりますが、その一つが「職員」の採用に関する業務です。上記した「慶應義塾職員採用情報」のWebサイトの中に近藤美佳さんという方が、「法人業務に携わる」というタイトルでインタビューを受けられています。彼女は私の人事部時代の部下であり、この「慶應義塾職員採用情報」のWebサイトの構築に携わっていただいた一人です。上記した神谷さん、そして近藤さんはいずれも慶應義塾大学のそれぞれ法学部、商学部を卒業された後、「新卒採用」で慶應義塾に就任されました。慶應義塾では、彼女たちのように母校にそのまま残る形で「職員」としての道を歩みはじめた方も数多くいらっしゃいます。その一方で、そんな母校に「大学職員」という職が存在すること自体気づかず卒業されてしまう方も多数いらっしゃいます。採用活動を行っても応募者母数が少なければその中からの選択ということになってしまいます。当然のことながら応募者母数が多ければ多いほど、多種多彩な人材が応募してくださる可能性が高まります。そこで、慶應義塾では、すでに他の企業等で勤務されていらっしゃる方の中で転職を検討されている方を対象とした「経験者採用」も実施しています。私が人事部で勤務する間にも数十名の経験者の方の採用を行いました。そこで驚いたのは、多種多様な場で働く方から多数の応募をいただいたことでした。大手銀行、大手メーカー、大手航空会社、大手旅行代理店、そして官公庁など、「新卒就職先ランキング」の上位にずらっと並ぶ有名企業からも多数の人材が応募してきてくださいます。そんな経験者の方とお話する中で私が必ず質問することがあります。それが、「どうして新卒の時に応募しなかったの?」という問いです。「経験者採用」で就任される方は慶應義塾大学卒業の方の他、他大学を卒業された方もいらっしゃいますが、いずれにしても「母校で働く」という可能性が見えなかったはずがありません。しかし、そこで返ってくるのは、「大学職員という仕事があることを知らなかった」という答えでした。「大学職員」という存在がまだまだ知られていないということはこんなところからもよくわかります。また一方で、「経験者採用」の方にその転職理由を聞いていくと、「新卒採用では、友人に流されてしまった」、「親を安心させるために会社の名前で選んでしまった」、そして「営利を追求する日々に自分の居場所はここではないと思った」等々、職業の選択を誤ってしまったことを多くの方から伺いました。アンマッチな職業選択の中に一生を勤め続けるというのは決して幸せな人生とは思いません。将来の選択という重要な場面においては、「知らなかった」という選択肢を残さないこと、これはとても大切なことだと感じます。

「おかしら日記」としては非常な長文となってきましたのでそろそろまとめたいと思います。この長文をもって私が言いたいことは、次の三つです。

 ① 大学には「大学職員」という人たちがたくさん働いています。

 ② 大学は「教員」と「職員」、この両輪で成り立っています。

 ③ あなたには「母校で働く」という選択肢があるのです。

そうです。もしこの原稿を読んでくださっているあなたが慶應義塾で学ぶ学生さんでいらっしゃるなら、

  「私たちと一緒に働きませんか?」

 「私たちと次の慶應義塾をつくっていきませんか?」

そんな風に声掛けをさせていただきたいと思います。湘南藤沢キャンパスの学生さんは慶應義塾大学の他のキャンパスに学ぶ学生さんに比しても多種多様な学びを経験されてきた皆さんです。そんな皆さんこそが慶應義塾の未来に欠かせない存在である、慶應義塾の未来にあるべき存在である。キャンパス事務長としてそのように考えています。毎年、看護師・助産師として看護医療学部の学生さんは数多くの方が母校に就職されています。総合政策学部、環境情報学部の皆さんについても、その進路の選択肢の一つに「慶應義塾職員」という未来を是非追加いただけることを期待しています。

最後になりましたが、キャンパス事務長としての私は、協生環境推進室という全塾にまたがる部門も兼務しています。もしまた皆さんに向けてお話させていただく機会がありましたら、「協生環境推進」の取り組みについても是非お話させていただきたいと思っています。今回は協生環境推進室のWebサイトを以下にご紹介させていただきます。

慶應義塾協生環境推進室Webサイト

 

「大学職員」の仕事は極めて多彩です。この原稿が、あなたに「大学職員」という存在に興味をもっていただくための第一歩となれば幸いです。