週末のニュース番組で、高校生がウニのからだの前後に方向性があることを発見したと紹介していた。それまでの生物界の常識を覆す新発見であり、緻密な観察による検証が高く評価され、ウニの移動を早送りするコミカルな映像と共に思わず引き寄せられた。
断片的な情報であったため、ネット検索したところ、マリンチャレンジプログラム全国大会2021の最優秀賞を3月に受賞した熊本県立済々黌高等学校生物部ウニ班の業績を知ることができた。
生物部飼育のムラサキウニをタイムラプスで撮影していた時にウニの移動の方向性に気付いたという。ウニは放射相称であり、進行方向を決める前後の方向性は無いと言われる中、観察から定説とは異なる気づきを大切に、その検証に取り組んでいる。
そこからの実験計画が素晴らしい。実験条件を一定に保ち、外的刺激を排除する工夫を凝らし、その一例として、ウニの移動時の物理的刺激や実験者の体温に影響されないようにオタマを使用した写真が報告書に提示されていて、鎮座するウニの様子には思わず笑みがこぼれてしまった。その他、棘の影響を考慮して長さを切り揃えたり、内部構造偏りの有無の確認に解剖したりと、報告書からは疑問を次々に確認していく追究する姿勢と面白さ、そしてウニ愛が伝わってきた。
そして、条件を変えながら何百回もの観察を重ねて新たな知見が得られているが、やはり最初の観察による気づきが大切であり、それはどのような分野でも共通するものである。
看護を専門とする私達は、対象である人や生活をしっかり観察する力を養い、思い込みにとらわれない気づきから、現象の本質を追究し、看護を発展させていきたいと思う。
(参考)「放射相称であるウニ類に方向性があった」
熊本県立済々黌高等学校生物部ウニ班