2022年11月と12月には、地球環境問題にとって二つの重要なイベントがある。一つは、11月6日からエジプトのシャルム・エル・シェイクで始まる気候変動枠組条約第27回締約国会議(COP27)である。もう一つは、12月7日からカナダのモントリオールで始まる生物多様性条約第15回締約国会議(COP15)である。COP15については、以前のおかしら日記でも少し紹介したが、新型コロナウィルス感染症拡大の影響を受けて開催が遅れに遅れて、とうとう場所も中国からカナダに変更されてようやく開催される。
COP27に先立ち気候変動枠組条約事務局は、10月26日に報告書を公表し、報道でも紹介されている。2015年に合意されたパリ協定では、各国は2100年までの平均気温の温度上昇幅を2度以下に抑えることに合意し、昨年グラスゴーで開催されたCOP26では、それでは不十分で1.5度に抑える必要があることが議論された。しかし、各国の2030年までの温室効果ガス排出削減目標を分析した結果、上昇幅を2度に抑える目標にはとうてい足らない状況で、このままでは2.5度上昇する見込みであるという結果になった。
日本政府は、2030年度までに2013年度比で46%の温室効果ガスの排出削減、2050年までの実質ゼロ、いわゆるカーボンニュートラルを目標に掲げている。カーボンニュートラルは、政府がやってくれるものではなく、すべての事業者、家庭にも求められるもので、学校法人も例外ではない。慶應義塾大学でも既に議論が始まっており、私たちの湘南藤沢キャンパス(SFC)が先頭を切って、昨年末から検討を始めていた。SFCの電力使用量は、慶應義塾全体では5%程度であるが、約34haの敷地面積を有する。環境やエネルギーに関わる教員学生も多いので、パイロット的に取り組むにキャンパスとしてふさわしいだろう。
かれこれ半年以上、教職員の皆さんと検討を進めてきて、ようやく方向性が見えてきた。敷地が広いといっても、緑地を伐採して太陽光発電パネルを並べるようなことはできない。SFCに必要な電力すべてをSFCの敷地内の再生可能エネルギーでまかなうことは不可能である。それではどうするか、そこが知恵の絞りどころである。近々2030年までのカーボンニュートラル化の目標を発表できる予定である。詳細は、11月20日、21日にSFCで開催されるオープンリサーチフォーラム(ORF)で紹介したい。2030年までにもうあと7年ぐらいしか残されていない。そして私たちの課題は気候変動だけでなく、生物多様性や資源循環といった環境問題にも直面している。これらに個別に取り組むのではなく、統合的なアプローチが求められている。SFCの学生・生徒、教職員はもちろんのこと、卒業生の皆さんとも知恵を出し合っていければと考えている。