MENU
Magazine
2022.10.04

SFCで食にこだわる|常任理事/政策・メディア研究科教授 土屋 大洋

加藤文俊研究科委員長がおかしら日記で「まるたか」のことを書いていた。SFCで学生生活を過ごしたことがある人なら、一度くらいは行ったことがあるだろう。私には特別な思い出があるわけではないが、後期博士課程の在籍時にはよく行った。湘南台駅の東側にある「まるとも」という中華料理屋といつも名前を混同していた。たぶん両者は関係ない。

SFC周辺の食の選択肢がまた一つ減ってしまったのはさびしい。かつては「ごんばち」という山梨のほうとう料理を出してくれる古民家レストランもあって、よく後輩の車に乗せてもらって食べに行っていた。

この1年あまり、多くの時間を過ごすことになった三田キャンパスでは、選択肢は無数というと大げさだが、かなりたくさんある。キャンパス内でも生協食堂の他、カレーで有名な山食、萬來舍、ファカルティクラブなどがある。キャンパスの外に行けばいろいろな選択肢がある。新しいところを開拓したいと思いながら、たいていはいつもの店に行ってしまう。

最近は旧図書館内に八角塔というカフェができて、コーヒーや紅茶とスイーツをいただける。塾監局は、常任理事業務と関係ない来客は入れてはいけないことになっている。三田キャンパスに本拠がある常任理事は自分の研究室に行けば良いが、そうではない私は困ってしまう。八角塔ができて、そこでお客さんに会えるようになったのは大変助かる。出版社との打ち合わせや卒業生との雑談、国境が開いて訪ねてきてくれる海外の友人たちとのおしゃべりのためにしばしお茶を飲みながら時間を過ごせるのはうれしいことだ。

ここ数年、慶應義塾は長寿、安全、創造を三つの柱に研究を整理してきた。長寿研究との関係で「食」は重要な要素だ。先日訪問した英国の大学には食の安全を研究するセンターがあるという。エネルギー価格が高騰し、インフレが世界経済を覆う中で、食へのアクセスは深刻さを増す可能性がある。

SFCでの食へのアクセスも細る中、食文化や食糧安全保障、食と健康を考える研究が充実できると良いのにと思う。街おこしをテーマとする教員や学生も多い。それぞれ地方に出かけておいしいものを食べていると思うのだが、食をテーマにもっとつなげられないだろうか。

慶應義塾は4人のウクライナ人の大学院生を受け入れた。そのうち2人はSFCの大学院政策・メディア研究科に所属する。ウクライナ料理ってどんなものだろう。ロシア料理と似ているのだろうか。ウクライナには行ったことがないので思い浮かばない。

来春、Ηヴィレッジが竣工すれば、もっと留学生が来るかもしれない。国際的な食文化論議が高まってくれるとうれしい。

土屋大洋 常任理事/政策・メディア研究科 教授 教員プロフィール