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2022.09.20

混群との遭遇|看護医療学部長 武田 祐子

裏山から「キャタキャタ」「ギャコギャコ」「ゲキョゲキョ」と何とも形容しがたい鳴き声が響くことが多くなった。中型の鳥の鳴き声かと目を凝らすが、それらしき姿をなかなかとらえることができない。週末に鳴き声が続くので眺めていると不自然に動く木の枝があり、見るとリスが3匹ほど飛び回っていた。まさか「リス?」と思いネット検索したところ、正体はタイワンリスであることが判明した。裏山は狸に続き、タイワンリスも繁殖している様子だ。居住地である横浜市内には小緑地が多数存在し、こうした環境がタイワンリスの急速な個体数増加と分布拡大を可能にしていると考えられている。いずれも害獣認定され、生態系への影響からの理解はできるが、もとはと言えば人が持ち込んだ結果であり、人間の都合でなんとも身勝手なものである。

眺めていると今度は小鳥が飛来したと思ったら、その数が半端なく数十羽の群れが飛び交った。目まぐるしく飛び回り、その間、「ツピツピツピ」と鳴き声を交わしている。シジュウカラの10羽程度の群れを見かけることはよくあるが、これほどの大群は初めてである。

よく見るとシジュウカラだけではなく、メジロ、コゲラ?も混ざっている。複数種で作られた群れのことを「混群」といい、このような鳥の混群は秋から冬にかけてみられることが多いそうである。集団で枝を揺さぶり、虫を誘い出して捕食しているようにも見える。巣立ちした幼鳥を含め集団で行動することで、効率よく食物と安全を確保しているらしい。混群にはリーダーは存在せず、種は違っても互いの鳴き声の意味を理解し、特に警戒音には素早く反応するという。

あまりの大群に、天変地異の前触れ?などと呆気にとられていると「ツ―ッピピピピ」という鳴き声と共にあっという間に飛び去って行った。

住宅街のマンションの裏山の限られた緑地に生息する、多様な小動物がコミュニケーションをとりながら生きる術から学ぶべきことも多くありそうである。

参考:横浜市の都市部小緑地に生息するクリハラリスの夏季における食性と生息地利用.Wildlife and Human Society 8 : 47­57, 2020

https://doi.org/10.20798/awhswhs.8.0_47

武田 祐子 看護医療学部長/教授 教員プロフィール