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2022.09.06

特別研究プロジェクト|環境情報学部長 一ノ瀬 友博

総合政策学部・環境情報学部には、特別研究プロジェクトいう授業がある。他の授業と全く異なる授業で、夏休みと春休みに開講される、担当教員がそれぞれ設定したテーマで内容が構成される、次の学期の単位となる(つまり夏休みのものは秋学期、春休みのものは春学期)という特徴がある。さらに、学期ごとの履修上限数にカウントされないので、短期間にできるだけ多くの単位を取りたい学生にはお勧めである。長期休暇の前にシラバスが公開される。

私はこれまで毎年夏と春に特別研究プロジェクトを開講してきた。それも自然豊かな場所で行う合宿形式である。私は生態学や環境学に関わる授業を担当しているが、実物を見ることはとても重要である。私がかつてドイツのミュンヘン工科大学に留学したときには、春学期の毎週1日はバイエルン州の多様な生態系を訪れ生物相を学び、学期末には日帰りで行けないアルプスの山岳地域で合宿があり、半年で州内の多様な生態系を理解できるようになっている授業があった。SFCで同じような授業を開講するのはカリキュラムの制約で難しい。そこで、せめて長期休暇中ぐらいは、日本の特徴的な生態系を学生に紹介できればと思っている。これまで北は知床や利尻島から南は小笠原諸島、西表島まで国内の各地を回ってきた。しかし、コロナ禍になり学部生の宿泊を伴う活動が制限され、それがかなわなくなっていた。

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3年ぶりに宿泊を伴う特別研究プロジェクトが可能になった!様々な制約と条件があるが、この夏休みから学部生の宿泊が許可されるようになった。そこで8月下旬に学生たちと道東を訪れてきた。密を避けるために履修者を4名だけに限定し、ボランティアで同行した2名の博士課程学生を加え、合計7名でのフィールドワークであった。目的地は釧路湿原、阿寒湖、野付半島、風蓮湖、納沙布岬、霧多布湿原、別寒辺牛湿原で、かなり駆け足で回ったが、それぞれで特有の生態系と生物相に出会うことができた。タンチョウヅル、オジロワシ、エゾシカ、ラッコといった動物たち、エゾカンゾウ、エゾフウロ、ハマナス、エゾカワラナデシコなどの植物を堪能できた。連日とにかく歩き、そして冷たい雨が降りしきる日もあったが、やっぱり一緒にフィールドに出られるのはとても楽しい。同行した学生たちの得意分野がそれぞれ異なるので、私にとっても貴重な勉強の機会であった。次の春休みには制約がなくなり、より多くの学生の履修を受け入れられればと期待している。

私の特別研究プロジェクトの紹介だけになってしまったが、多くの教員が魅力的な授業を提供しているので、学部生の皆さんには積極的にこのような機会を活用して欲しい。

一ノ瀬 友博 環境情報学部長/教授 教員プロフィール